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第59号(2007年9月)

わが国における所得課税の再分配効果
―タイル尺度に基づく実証分析―

深江敬志(青山学院大学非常勤講師)
望月正光(関東学院大学教授)
野村容康(獨協大学准教授)

〔要 旨〕

 本稿では,税務統計データを用いて推計したタイル尺度に基づき,所得者別・所得階層別の要因分解を試みることによって,わが国における所得課税の再分配効果について検証した。分析の結果,以下の諸点が明らかとなった。

 (1) 申告所得税全体の再分配係数は,長期的な低下傾向にあるなかで,昭和44年〜昭和50年と昭和62年〜平成3年において急激に低下し(ボトム効果),平成11年には,急上昇する(ジャンピング効果)。
 (2) 申告所得の不平等度(タイル尺度)および申告所得税全体の再分配係数は,給与所得者・譲渡所得者等を含む「その他所得者」のグループ内の効果によってほぼ説明される。
 (3) 高所得階層(上)の再分配係数は,2度のボトム効果,およびジャンピング効果の時期に非常に大きく変動しており,全体の再分配効果の動きに対して強い影響を及ぼしている。
 (4) 所得階層別の再分配効果における税率効果は,控除効果に比べてかなり大きく,近年の税率フラット化を反映して低下傾向にある。そうした中,2度のボトム効果は,高所得階層(上)における税率効果の急落に起因する一方で,ジャンピング効果は,この年に控除効果が急激に高まっている点から,主に定率減税の影響によるものと推測される。
 (5) 2度のボトム効果を発生させた主因として土地譲渡所得課税制度の変更が指摘できる。すなわち,長期譲渡所得に対する税率の引下げが全体の再分配効果の変動に大きな影響を与えたものと考えられる。

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