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第57号(2007年3月) 国債管理政策の新展開

シ団引受発行の廃止と国債市場特別参加者制度の創設

中島将隆(甲南大学経済学部教授)

〔要 旨〕

 平成18年度をもって国債募集引受団(シ団)による10年国債発行が廃止され,10年国債は国債市場特別参加者制度(日本版プライマリー・ディーラー制度)の下で発行されるようになった。日本版プライマリー・ディーラー制度は平成16年10月に創設されたが,この間,この制度が本来の機能を果たすことができるか検証されてきた。入札を重ねるごとに制度本来の目的を果たすことができると検証され,平成17年12月19日に開催された「国債発行世話人会」に於いてシ団引受は廃止しても差し支えない,とされたのである。10年債以外の他の国債は公募入札によって発行されている。従って,平成18年度から全ての国債は公募方式で発行されることになったのである。
 日本の国債は,長らくの間,10年国債が中心で,10年国債はシ団引受によって発行されてきた。国債種類の多様化が進み,公募発行が増加するのは昭和50年代後半以降のことである。
 シ団引受発行は,世界に例を見ない日本固有の発行方式である。そして,この発行方式は,日本の国債管理と金融政策と密接に関連していた。シ団引受発行の歴史は,日本の国債管理と金融政策の歴史でもある。この発行方式が廃止されたということは,国債管理と金融政策の変化を象徴するだけでない。シ団引受の歴史的役割も終わった,ということである。
 小論では,シ団引受の歴史的役割を振り返り,日本版プライマリー・ディーラー制度導入の意義を検討していく。まず,シ団引受の持つ二つの異なる役割,すなわち,シ団引受が財政資金の安定調達と長期金利決定方式という二つの役割を持つことを明らかにする。次に,昭和50年代後半以降,シ団引受発行額が減少し,代わって公募発行額が拡大していくこと,また,こうした国債発行方式の変化と共に,シ団引受発行の性質も徐々に変化し,シ団引受発行が限りなく公募発行に近い発行方式へ変化していく過程を分析する。その上で,なぜシ団引受の性質が変貌したのか,なぜシ団引受は廃止されたのか,シ団引受に代わる日本版プライマリー・ディーラー制度は如何なる特徴を有しているか,また,なぜ日本ではプライマリー・ディーラー制度ではなく国債市場特別参加者制度と言われるのか,以上の点を検討していきたい。

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