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第56号(2006年12月)

日米間金融制度の異同

高木仁(明治大学名誉教授)

〔要 旨〕

 本稿は,明治初期から今日までわが国の金融制度へ,強い影響を及ぼし続けているアメリカの金融制度と,わが国の制度との間における異同の分析を,目的としている。この作業により,わが国金融制度の実情を別の方角から見直すことが期待できる。
 重要な金融制度の創設を,(1)銀行制度の発足,(2)中央銀行の設立,(3)中央銀行政策委員会の設置,および(4)預金保険制度の開始の4点に絞り,いずれも日米間で比較分析を行い,それぞれが現在なおもつ含意を探る。わが国の金融制度は,明治初期からアメリカの影響を受け続けてきたため,対象期間は130年間に及ぶ。
 課題へ接近した結論は,以下のようになった。(1)アメリカで金融制度は,創設と改革へ至るまで産みの苦しみを,経験するのが通例となっている。(2)これに対し,わが国は産みの苦しみわずかで外国ことにアメリカから,多くの制度先例を移入してきた。(3)金融制度に限らず,わが国は社会文化や社会制度が重度の移入偏重で,重度の移出不足になっている。(4)わが国の金融制度は,アメリカから一方的に移入するだけで,対米移出が全くない。(5)アメリカの金融制度は,130年間以上にわたり,わが国の金融制度へ強い影響を及ぼし続けてきた。(6)金融制度の日米間比較は,日米2極だけで行うと勝ち負けに偏ってしまうから,多極間の比較が必要とされる。

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