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第54号(2006年6月)

わが国上場企業の配当政策変更の決定要因に関する実証分析

牧田修治(りそな総合研究所アソシエイト)

〔要 旨〕

 本論文は,1991年度から2000年度のわが国1部上場企業を対象として,univariateおよびmultivariateなアプローチによって,配当政策変更の決定要因を実証的に明らかにすることを目的とする。まず,univariateなアプローチによる分析により,配当政策の変更と同時期に,総資産営業利益率(ROA)が過去の平均的な水準と比較して,増配の場合はプラス方向に,減配の場合はマイナス方向に有意に乖離するというROAショックが生じていることが明らかになった。次にこの分析結果に基づいて,商法改正によって利益配分手段として新たに加わった自社株買いの影響も考慮し,増配,減配,自社株買い,配当据置・自社株買いの実施ナシという4つの選択肢によるネスティッド・ロジット・モデルによって,配当政策変更の意思決定に影響を与える要因を分析した。この結果,ROAショックとショック後のROAの水準自体が配当政策の変更に影響することが明らかになった。また,自社株買いは,増配とは決定要因が異なる結果となり,利益配分の増加という点で両者は同じ財務手段とみなせるものの,情報機能の点で異なる財務手段である可能性があることが明らかになった。

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