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第45号(2004年3月)

アジア国際債とソブリン格付け

猪口真大(一橋大学大学院博士後記課程)

〔要 旨〕

 現在,アジアにおける債券市場の拡大に関して様々な議論があるが,その中で国債市場の発展や適切な格付けを行う機関の整備の必要性についても指摘されることが多い。こうした状況で,アジアにおける政府関連債券の価格に影響を与える要因として米国格付け機関によるソブリン格付けを取り上げ,両者の関係をみることは,政策的な意義があると考えられる。しかし,このテーマに関する先行研究は非常に少なく,また,分析が不十分なことも多いことから,本稿では政府発行の国際債インデックスとソブリン格付けの関係を分析する。具体的には,韓国,マレーシア,フィリピン,タイの債券市場や政府関連の国際債の発行状況を調査し,さらに,回帰分析とデータ変動の分析から,国際債インデックスの変動に格付け変更が影響を及ぼしたのか,逆に,国際債インデックスが格付け変更に先行して変動したのかを考察する。その際,日本についても分析し,アジアにおける結果と比較している。実証分析の結果,国や時点に依存してしまう場合が多いものの,アジア諸国の国際債インデックスは格付け変更の影響をあまり受けていないことが明らかとなった。逆に,格下げ方向に関する格付けの変更は国際債インデックスの変動から影響を受けていたことが示された。このことから,アジアのソブリン格付けが適切であったとはいえない可能性が高い。

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