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第40号(2002年12月) 証券市場の規制を巡って

証券市場とは何か
―資本市場論と証券市場構造―

野下保利(国士舘大学教授)

〔要 旨〕

 我が国では,「バブル」経済崩壊後,資産価格が「理論値」から乖離しているとして,過度な資産価格抑制策が採られたが,その背後には資産価格がファンダメンタルズに規定されるとする効率的市場仮説に代表される現代資本市場論があった。
 現代資本市場論は,マーコビッツの資産選択論から始まり,シャープによるCAPMによって資本市場均衡下の資産価格論として登場した。この資産選択論と均衡資本市場論の奇妙な統合を特徴とする現代資本市場論は,ファーマによる効率的市場仮説において,資本市場の一般論として提示される。しかし,現代資本市場論は,マクロ経済学的含意を引き出すために要請される均衡制約のために,証券需給を規定する証券市場の構造的要因が分析対象から抜け落ちてしまう点に致命的な欠陥がある。その結果,証券市場の需給関係や,それを規定する資本市場組織の存在と役割が見失われることになった。
 現代資本市場の意義や役割を認識するには,均衡制約付き資本市場分析に代えて,証券需給に作用する証券市場構造を取り込みえる構造的需給関係アプローチを採用する必要がある。さらに,こうした観点からみるならば,日本経済の再生に不可欠な資産市場活性化のためには,証券業改革と並んで,国内銀行構造を,都銀中心のシステムに代わって広域的地銀を核とする競争的銀行システムに転換することが要請される。

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