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第39号(2002年9月)

企業の内部資金と設備投資
―日本の製造業のパネル・データによる分析―

郭麗虹(京都大学大学院)

〔要 旨〕

 MM定理によると,企業の投資決定に際しては,企業の資金調達手段の違いは投資に影響を与えない。しかしながら,情報の非対称性やエージェンシー・コストが存在している場合には,内部資金と外部資金は完全代替ではない。「ペーキング・オーダー理論」によれば,内部資金は企業にとっては最も割安な資金調達方法である。したがって,設備投資の水準は,企業の保有している内部資金に左右されることになる。本稿では,日本の製造業の財務データを用いて内部資金と設備投資の関係について検証を行う。これまでの関連の先行研究では,規模の異なる企業間の内部資金と設備投資の関係に着目したパネル・データに基づく実証分析はあまりにも少ない。したがって,本稿は東証上場製造業を企業規模で3つのグループに分類し,パネル分析の方法を用いて,内部資金の変動が設備投資に与える影響について実証分析を行う。また,3つのグループの企業において,それぞれの内部資金の投資に対する重要性を計測し比較する。
 主な結果は次の通りである。

大企業の内部資金は中小企業のそれと比べて,設備投資に与える影響がより大きい。
化学,食品,紙,電気機械および一般機械の5つの業種において,大企業における内部資金の役割はより大きい。
売上高は内部資金と比べて,設備投資に与える影響がより小さい。

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