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第39号(2002年9月)

オンライン証券取引をめぐる規制動向

佐賀卓雄(東京研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 オンライン証券取引は登場から数年の内に,有力なチャネルの一つに成長した。その過程で,システム・トラブルが頻発する一方,それが提供するサービスも多様になり,定型化されたポートフォリオ分析ツールや運用アドバイスのようなものまで提供され始めた。かくして,システムについての投資家への情報開示,代替的チャネルの確保などについての規制が必要になるとともに,対面取引や電話取引に対する規則である「勧誘」や「適合性の原則」との関係などが問題になった。
 また,インターネット取引が普及するのにともない,それを利用した不正行為も増加した。アメリカでは,SECや自主規制機関(SRO)の他に,各州に証券局が設置され,EDGAR(電子開示システム)ではカバーされない地方の銘柄についての情報管理を行い州居住者の保護を行っている。そして,これらの証券局とカナダ,メキシコはNASAA(北米証券監督者機構)を組織し,クロスボーダーの取引の監視を行っている。
 これらの監督機構が力を入れているのは,投資家の啓蒙および投資家からの情報提供である。こうした体制に支えられて,SECはネット上の不正行為を積極的に摘発し,その件数は累計では既に200件を越えている。
 これに対して,日本では投資家の啓蒙,監視体制のいずれにおいても大きく見劣りがする。これはこれまで銀行システム優位の構造が続いてきたことの弊害のひとつであるが,証券市場の透明性,投資家の信頼性を高めるためには,これらの面での体制の強化が必要であろう。

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