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第36号(2002年3月)

証券アナリストを取り巻く環境変化について

佐賀卓雄(当所東京研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 アメリカ証券市場の基本的な市場運営哲学は情報開示制度であり,その徹底によって証券市場の効率性,公正性を高めようとするものである。しかし,言うまでもなく証券市場は不特定多数の投資家が参加することによって成り立っているから,その情報消化能力も一様ではない。年金基金,生命保険会社,あるいは投資信託のような機関投資家であれば自ら情報の収集,分析を行う能力がある。
 これに対し,個人投資家は情報へのアクセスの手段は限られているのが現状である。ここで導管(conduit)として重要な役割を果たすのが,セルサイドの証券アナリストといわれる専門家である。彼らの役割は発行体や証券についての情報を収集,分析して,投資家に分かり易い形で提供することである。これによって,投資家間の情報格差が埋められ市場の効率性が高まり,競争条件が公平になることが期待されるのである。
 しかし,仮に発行体あるいは証券アナリストの情報提供が一部の者に対してのみ優先してなされたり(選択的情報開示),あるいは証券アナリストの提供する情報が偏ったものであるとすると,証券市場の効率性,公正性の維持に対して由々しい問題となるであろう。
 そこから生じる弊害は,発行体との癒着,それによるアナリストの中立性に対する疑問であり,それは強いては投資家の証券市場に対する信頼を揺るがしかねない。SECがこの問題を重要視する理由である。
 わが国でも,アメリカでの動きを受けて,(セルサイドの)アナリストの役割や業務に関心が高まっている。アナリストの組織,役割などがアメリカとは異なり同列には論じられない面も多い。しかし,証券市場の信頼性,効率性を高めることを目指す近年の金融システム改革の趣旨に沿うためにも,アナリストの地位を向上させ,その役割を強化する措置を講じることが必要であろう。

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