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第35号(2002年1月)

証券アナリストの予想EPSと企業の情報開示

末木将史(中央大学大学院)

〔要 旨〕

 この研究は,セルサイド・アナリストによる予想1株あたり利益(予想EPS)に含まれる誤差と企業の決算数値との対応関係について分析したものである。
 誤差の発生理由に関する研究では,アナリスト側の行動にその原因を求めるものが主流である。しかしながら,予想EPSの誤差の究明には企業側の行動も検討する必要があるだろう。アナリストが予想EPSを作成するには企業経営者からの情報取得が不可欠とされる。もし予想作成に投入する情報の質や量に問題があれば,それが原因として誤差を発生させることになるからである。
 この研究の分析デザインは,月次ベースでのコンセンサス予想EPSに含まれる誤差と95〜98年までの252社による決算数値との対応を調べるものである。経営者側による情報開示は特別損益で代理できるとの前提を置いた上で,もし,情報開示が適切であれば,それら代理変数と誤差との間には有意な係数は算出されないとの仮説を設定する。その際,アナリスト側による誤差発生も考えられるため,経常損益と誤差との対応関係でコントロールする。
 分析の結果,特別損益項目と誤差との間には有意な関係が検出され,経営者側による誤差発生の可能性が示唆された。ただし,モデルの説明力が十分に高くないことから,アナリスト側には誤差発生の原因がないことを意味するものではない。

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