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第23号(2000年1月)

現代企業税制改革の源流
―シャウプ法人事業税改革の意図と企業会計―

関口智(東京大学大学院)

〔要 旨〕

 本稿の課題は,現代企業税制改革,中でも事業税改革において回帰が叫ばれるシャウプ法人事業税に関する論点を,勧告当初のシャウプの意図に絞って検討することである。
 従来,シャウプ事業税勧告の関する評価は,多少の混乱はあるも,売上税の洗練された一形態として意図されたとのものが大半であった。しかし,支払利子の損金不算入は,企業が証券市場などにおいて資金調達するにあたり,新株発行と負債(社債発行・借入)のいずれが有利かという,企業の資金調達に関する中立性を問題にしたアメリカにおける法人税の議論を踏襲している。また,支払賃金の課税標準算入も,アメリカにおいて導入されていた社会保障税の事業主負担を意識していた側面 も見て取れる。そして,支払利息と支払賃金を入れることで,資本集約産業に対しても,労働集約産業に対しても中立になるように配慮している。つまり,シャウプは企業の組織形態または資金調達に関して経済的に中立になる企業課税として事業税(付加価値税)を想定していたのである。
 また,課税標準の算定方式である資本財一括控除法は,現在から見れば資本蓄積促進のための算定方式であり,売上税的側面 を裏付ける一つの根拠とされる。しかし,資本財一括控除を勧告したのは,支払利子の課税標準算入が,負債(社債発行・借入)による資金調達を行っている企業に対して生じる「流動資本の不足」を危惧していたからである。さらに,シャウプ・ビックリーによる『Supplementary Note on the Value-Added Tax. 』などの資料を用い,企業会計の側面から帳簿組織,損益計算書を作成すると,控除方式を採用した理由は,単に算定を簡素にすることを意図したにすぎないことがわかる。しかし,このようなシャウプの本来の意図は,世論・政策担当者が介在することで変質してしまった。

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