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第15号(1998年9月)

イギリスの国債市場と大蔵省証券

代田純(立命館大学序教授)

〔要 旨〕

 本稿は1980年代以降の,とりわけ1990年前後のイギリスの国債残高における大蔵省証券の増加を金融政策との関連で明らかにするものである。
 現在,主要先進国の金融政策において公定歩合に代わり公開市場操作(いわゆるオペ)が重要な役割を演じつつあることは論を待たない。内外資金移動が本格化するなかで機動的な市場金利調整が不可欠になっているからである。
 80年代後半から90年代前半にかけてのイギリスにおける国債の満期構成をみると,長期ギルド債(15年以上)の減少と対照的に大蔵省証券の急増が大きな特質を成している。大蔵省証券は国債残高において,87年には1.4%でしかなかったが90年には6.2%にまで上昇した。財政収支が黒字であったにもかかわらず,短期金利引き上げのために,大蔵省証券発行が急増したためであった。
 イギリスにおける大蔵省証券のオペは,80年代前半においては売買合計で30億ポンド程度であったが,88年に70億ポンド台に,そして89年には160億ポンド台に急増した。しかも88年から89年にかけては売オペの比重が極めて高まったことが特質であった。売オペは市場金利を引き上げ,ポンドの為替レートを高めに誘導する目的を有していた,と見られる。
 88年から89年にかけて,イギリスはERM(為替レートメカニズム)加盟を目指し,ポンドの対マルクレートを1ポンド=2.77マルク以上に維持する必要性に迫られており,大蔵省証券発行額増加は公開市場操作の売オペを補完する役割を果 たしたと言えよう。

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