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第125号(2024年3月)

取締役・従業員間の報酬格差と企業パフォーマンス

頭士奈加子(当研究所研究員)

〔要 旨〕

 企業内の報酬格差が企業のパフォーマンスに及ぼす影響については,海外の企業を対象にポジティブな影響とネガティブな影響のどちらも報告されており,どちらの影響が優位かは実証上の問題である。また,労働市場の状況は国ごとに異なるため,海外を対象とした調査結果が日本企業に当てはまるかはわからない。本稿では,日本企業を対象に,取締役・従業員間の報酬格差と企業パフォーマンスとの間の関係を経済的な要因で説明される部分と説明されない部分に分解して調査している。検証の結果,経済的な要因で説明される報酬格差は企業パフォーマンスとの間にポジティブな関係が,説明されない報酬格差はネガティブな関係があることが示唆された。さらに,経済的な要因で説明される報酬格差の影響は長期間持続せず,説明されない報酬格差の影響は長期間持続することが示唆された。また,経済的な要因で説明されない報酬格差のタイプ別に調査した結果,⑴取締役の報酬と従業員給与がともに過少な中で発生する過剰な報酬格差,⑵過剰な取締役の報酬と過少な従業員給与を背景とした過剰な報酬格差,⑶過少な取締役の報酬と過剰な従業員給与を背景とした過少な報酬格差の順で企業パフォーマンスとの間のネガティブな関係が強いことがわかった。最後に,経済的な要因で説明されない報酬格差と株価パフォーマンスとの間のネガティブな関係は役員持株比率が高まるに連れて緩和されることも示唆された。

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