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第121号(2023年3月) ヨーロッパ資本市場研究会特集号

EUにおける株式市場規制の展開とブレグジット

石田周(愛知大学地域政策学部助教)

〔要 旨〕

 本稿の課題は,EUにおける株式市場規制の変遷を振り返りつつ,イギリスおよびEUの株式市場規制へのブレグジットの影響について検討することである。1986年の「ビッグバン」以来,イギリスは欧州における株式取引を巡る競争の中心に位置してきた。1985年にロンドン証券取引所のもとでSEAQ-Iが設立されると,マーケットメイク方式の利点から大陸欧州の株式が多数取引されるようになった。これに対し,大陸欧州における証券取引所もまた,オークション方式を基礎としつつ,システムの電子化等の改革を進めた。また,1990年代以降,取引所と競合する多角的取引システム(MTF),金融機関による株式取引の「内部化」,そして,機関投資家向けの匿名のクロッシング・ネットワークなどが台頭したが,その中心地はやはりロンドンであった。これに対抗するために,大陸欧州の取引所もまた,取引所間の連携や統合などを進めてきた。このような競争を背景として,ブレグジット以前のEUでは,株式市場規制を巡ってイギリスと大陸欧州諸国との間で対立と妥協が繰り返されてきた。以上のようなEUにおける株式流通市場とその規制の変遷に鑑みれば,ブレグジットは,EUおよびイギリスの株式市場そのものだけでなく,両者の株式市場規制の方向性に大きな影響を及ぼすと考えられる。

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