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第108号(2019年12月)

コーポレートガバナンスと機関投資家
—スチュワードシップコード改訂後の議決権行使の状況について—

山内麻理(国際教養大学客員教授)
好川透(シンガポール経営大学教授)

〔要 旨〕

 本稿では,日本版スチュワードシップコードの改訂により始まった機関投資家による議決権行使の結果について,投資家のタイプごとに分析し,どのような投資家がどのような会社提案議案についてより多くの反対票を投じているかについて検討した。先行研究に従えば,資産運用会社のように投資先企業とアームズレングスの関係を持つ投資家は,保険会社のように投資先企業とビジネス上の関係を持つ投資家と比較すると,会社側提案に対して異議を唱える可能性が高いとされる。また,株式持ち合いなど日本的背景を考慮すると,日本においては,外資系投資家の方が国内の投資家に比べて,会社提案に対して反対票を投じる可能性が高いことも予想される。2018年度の議決権行使の結果を分析したところ,ほぼ先行研究と同じ結果が得られ,業種で分類した場合,資産運用会社の方が生損保のような保険会社より反対票の比率が高いこと,資本国籍で分類すると,外資投資家の方が買収防衛策の導入や退任役員への退職慰労金の支給など特定の項目について,日系の投資家に比べて反対率が高いことが確認された。

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