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第111号(2020年9月)

国際資本移動からみた国際金融センター・シンガポールの特徴

取越達哉(大和アセットマネジメント㈱)

〔要 旨〕

 本稿では,シンガポールの対外資産負債残高を分析し,国際金融センターとしての同国の一側面を明らかにすることを試みた。分析に際しては,金融統合の尺度と位置付けることができる,①対外資産残高と対外負債残高合計の対名目GDP比,本稿で新しく考案した②対外資産残高と対外負債残高に基づく投資特化係数を用いた。①は,経済規模との比較により国際金融取引の活発さを捉える指標,②は,対外資産残高と対外負債残高の大小を踏まえて,国際金融取引の双方向性を捉える指標である。いずれの指標についても,対外資産負債残高統計の各項目を組み合わせた時のパターンがどのような特徴を持つかに着目しつつ,他のアジア及び主要先進国との国際比較を行った。
 ①の分析からは,同国の国際金融取引は,項目を問わず活発に行われているが,それはとりわけ「その他投資」において顕著であることが明らかになった。
 ②の分析からは,直接投資とその他投資については「対外資産残高と対外負債残高が同程度で,ほぼ完全に双方向の国際金融取引が行われている」,証券投資については「対外資産残高が対外負債残高を上回り,双方向とは言えない国際金融取引が行われている」という特徴が明らかになった。そうした証券投資残高における不均衡の一因として,直接投資(負債)等を通じて,同国資産運用業が設定するファンドへと国外資金が流入している可能性もまた,明らかになった点である。

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