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第87号(2014年9月)

GSEsを通じて考える米国金融規制の問題点

若園智明(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕

 米国の金融・資本市場制度にとって,2010年に成立した通称ドッド・フランク法は包括的変革の起点に位置づけられる。同法の内容および成立過程の分析は,米国市場の研究のみならず国際的な市場制度比較の観点からも必須であろう。同法は,2010年時点で米国金融・資本市場が抱えていた諸問題に対しての総合的な処方箋と言える。
 しかしながら,ドッド・フランク法の契機となった金融危機を考えると,その震源地となった米国住宅金融市場の主要プレイヤーであるファニーメイおよびフレディーマックに関して,後述のように同法が積極的な改革を提示していないことに疑問が生じる。これら2社が政府管理下に置かれた時点での負債発行額だけを見ても,両社が「大きすぎて潰せない存在(too big to fail)」であり,ドッド・フランク法の対象となるはずである。
 ドッド・フランク法がこれら2社の政府支援企業(Government Sponsored Enterprises,GSEs)改革に直接的に言及しなかった理由を考えることは,同法の成立過程分析および同法を基準として整備される規制構造の体系的な分析にとっても有益であると考える。本稿では,ファニーメイとフレディーマックの2社をGSEsと呼称し,①GSEsの組織的特質および②金融危機以前の改革議論を踏まえて,米金融規制におけるGSEsの特徴を検討する。さらに,③第113回連邦議会(2013年1月から2015年1月)で提示されている主要なGSEs改革法案を鑑みることで,ドッド・フランク法を基盤とする規制が抱える問題点を合わせて考えたい。

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