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第78号(2012年6月)

わが国との比較でみる中国の中小企業金融の現状

西尾圭一郎(松山大学准教授・当研究所客員研究員)
西村友作(対外経済貿易大学講師)

〔要 旨〕

 リーマン・ショック以降,欧米諸国において経済停滞が生じている中,中国をはじめとする新興国が世界経済の新しい牽引役として期待されている。それらの国々の経済発展において,中小企業は非常に重要な役割を果たしているが,中国の中小企業の資金調達環境はあまり芳しくはない。本稿では中国の中小企業金融の厳しい現状を整理し,わが国の中小企業金融の現状と比較したうえで,今後どのような形で中国の中小企業金融が発展していくべきか検討した。中国の中小企業金融はわが国同様間接金融が中心であるが,金融機関の貸し渋りが生じているため銀行から融資を受けている中小企業は数少なく,民間信用に頼る企業も多いなど,資金繰りは厳しい。そのような状況は中小企業向けの金融機関が存在せず,政策金利も高いという構造的要因と民間企業の低い信用という企業側の要因とによって形成されている。
 一方でわが国の中小企業金融は地方銀行や信金など,裾野の広い金融構造の存在とリレーションシップ・バンキングによって支えられている。今後,中国が安定した経済発展を続けるためには,中小企業をとりまく資金調達環境の整備が不可欠であり,中小企業金融の担い手としての地域金融機関や中小の金融機関といった多層な金融機関の育成が必要であるため,わが国の中小企業金融は大いに参考になるだろう。

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