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第61号(2008年3月) 取引メカニズムの急激な変化に晒される証券市場

取引所はゲームセンターか?
―アナリスト活動と無縁なノイズトレーダーの存在無くしては流動性が確保されないほど株式市場は柔な存在なのか?―

広田真人(首都大学東京客員教授)

〔要 旨〕

 東証は,ここ数年システム能力不足への批判に晒されているが,その背後にはデイトレーダーとアルゴリズム取引の急拡大がある,しかし,彼らはいずれもノイズトレーダーであって情報トレーダーではない可能性が大きい。つまり彼らは取引所をゲームセンターとして利用している存在に過ぎない。
 株式市場の普遍的存在理由としての「資本コスト発見機能」におよそ寄与しないノイズトレーダーであっても,流動性供給者としてマーケットにとって不可欠とする見方が多いが,同じ情報であっても将来CFにいかなる影響を与えるかは決して誰にも分からない以上,情報トレーダーだけでも価格形成は可能と考えたい。
 そもそも東証の最大の役割は,我が国企業経営者に対し,資金提供者の総意としてのカットオフレート(資本コスト)を提示することにあるのであって,ゲームセンターとして利用するのは自由であるが,物事の順番を違えてはならないのである。
 従って,ノイズトレーダーをトービン・タックス的視点から規制する必要はなく,放置しておけばよいが,彼らのニーズに合わせてマーケットを設計するのはマーケットの存在理由をおよそ理解していない。

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