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第30号(2001年3月) 金融システム改革下の公社債市場の課題

金融システムの衰退と証券化の役割

原田喜美枝(東京研究所研究員)

〔要 旨〕

 本論文は,1990年代の日本における金融システムに焦点を当てて,金融システムの劣化の過程について分析し,金融システムの機能を強化する施策の一つとして注目される証券化の重要性について考察することを目的としている。
 1990年代の日本経済は,バブル経済の崩壊と経済成長力の低下により,大きな混乱をみた。金融システムが不安定化するにつれて,貸し渋りが生じ,金融仲介システムも機能しなくなっていった。今後,効率的な金融システム機能を維持するためには日本においても証券化を幅広く受け入れる体制をさらに整備する必要がある。
 本論文は,金融システムが衰退した過程について,金融システムを取り巻く環境変化の内容を確認すると同時に,金融システム安定化策の影響について考察している。日本の金融システムは情報技術の発展に対して適応能力が不足していたこと,規制枠組みの転換が遅れていたことが金融システムの効率性や金融機関の競争力を阻害していた要因になっていることを明らかにしている。そのうえで,証券化商品と市場規模,銀行による証券化という観点から証券化市場の現状について概観している。制度の解説や歴史的叙述に留めず,金融仲介に関する理論的枠組みに沿って1990年代の金融システムの機能や構造,証券化について現実的に分析することに注力した。

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