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第22号(1999年11月) 機関投資家とコーポレート・ガバナンス

株式所有構造とコーポレート・ガバナンス

広田真人(東京証券取引所調査部主任調査役)

〔要 旨〕

 『コーポレート・ガバナンス論』は,所有と経営の分離の企業経営への影響を議論するという点で古くて新しい議論でありながら,現在,日本企業のガバナンス主体が銀行から市場への転換点に直面 していることに加え,アカデミズム内部でも応用ミクロ経済学の最先端エリアの一つである「契約と組織の経済学」に格好の分析対象を提供していることもあって,最近注目を浴びている。しかし,この分離,換言すれば誰が具体的ガバナンス主体となろうとも,資本制的商品経済下にあって最大限の利潤を求めて厳しい企業間競争に晒されている企業経営の本質的ありように変化があるはずは無いというのが本稿の基本的立場である。その意味では,コーポレート・ガバナンスの議論は経済学の問題というより経営学の問題と言うべきであろう。
 こう考えると,「株式所有構造とコーポレート・ガバナンス」の関連を議論した先行実証研究が,リサーチ・デザイン即ち対象会社・対象期間によってバラバラの結果 となり,一定の方向性を見出せずにいることは,本稿の基本認識とむしろ整合的ですらある。
 ただそうはいっても,日本企業のコーポレート・ガバナンスの実証研究しようとするとキーとなるのは結局金融セクターのガバナンスであるが,直感的説明力を持つ『金融当局=ガバナンス説』を支持する統計結果 が得られていないことは象徴的である。

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