第133号(2026年2月)アジア資本市場研究会特集号
株式市場格上げが上場企業に与える影響:ベトナムにおける実証研究
グエン ティ フォン タン
(立教大学グローバル・リベラルアーツ・プログラム運営センター特任准教授・当研究所客員研究員)
- 〔要 旨〕
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本研究では,イベント・スタディ法を用い,ベトナム株式市場の格上げおよび関連する規制変更が,2024年から2025年にかけての上場企業の株価に与えた影響を検証する。分析対象とする4つの主要イベントは,事前入金要件の撤廃,市場区分の中間レビュー,KRX取引システムの稼働,そして公式な格上げ発表である。実証分析の結果,事前入金の撤廃やKRXシステムの稼働といった構造改革は正の異常リターンをもたらした。一方,2025年10月7日の公式格上げ発表は,広範な市場において「事実で売る(セル・ザ・ニュース)」仮説と整合的な,著しい負の反応を引き起こした。また,市場内では顕著な乖離が観測された。時価総額加重平均であるVN指数が上昇する一方で,個別銘柄の多くは下落するという「市場の二極化」が浮き彫りになった。これは,資金流入がFTSE組み入れ適格となる大型株に集中し,広範な銘柄からは流動性が引き揚げられたことを示唆している。