第133号(2026年2月)アジア資本市場研究会特集号
中国本土における証券市場の戦略的開放と人民元の国際化
野木森稔(日本総合研究所)
- 〔要 旨〕
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中国証券市場への海外からの資本流入が加速している。これにはコロナ禍での過剰流動性だけでなく,主要運用ベンチマーク指数への中国本土証券の採用や香港を通じた金融ツールの強化が影響しており,中国政府による戦略的な働きかけや政策の実施が奏功した形である。資本移動の自由化は必然的に人民元の国際的な取引量を増やし,為替の不安定化というリスクを高めるが,中国政府はそれも許容しようという姿勢である。同時に金融政策の独立性も強化し,「国際金融のトリレンマ」の克服,つまり「資本移動の自由化」と「独立した金融政策」を選択し,「為替の安定」を放棄する動きを見せており,日本や米国が持つ国際金融に関する体制と同じ方向に向かおうとしている。米中対立が長引き,経済安全保障への意識が高まるなか,中国は財貿易において逆風に苦しむ一方,金融面では着実にその存在感を高めるべく中国政府は取り組みを積極化していると言えよう。なお,一連の動きはあくまでも「戦略的」な資本市場の開放を軸とするものであり,本格的な開放/自由化とまでは言えない。しかし,それでも第2次トランプ政権の誕生という米国政治の変調など,不完全な開放/自由化であっても,この動きは国際化が進む中国人民元に大きなチャンスをもたらしている可能性がある。