第133号(2026年2月)アジア資本市場研究会特集号
リスクオフ局面における新興国の対内株式投資
大野早苗(武蔵大学経済学部教授)
- 〔要 旨〕
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本研究は,アジア諸国を含む新興国の対内株式投資を対象に,リスクオフ局面における新興国固有の要因と株式売却との関係を検証したものである。リスクオフ局面では,経済ファンダメンタルズが脆弱な国がより大規模な資本流出に晒されるとの主張がある。ここでは,グローバルリスク要因の変動を基にリスクオフ局面を特定化し,プーリング推計によりリスクオフ局面における新興国の対内株式投資と固有要因の関係を分析した。経済ファンダメンタルズと株式売却の間に一定の関係が見出されたものの,経済ファンダメンタルズの影響を強く示唆する結果は得られなかった。むしろ,主要な株式インデックスに採用されるか否かが資本流出の規模と強く関連することが示唆された。主要な株式インデックスへの採用の有無は新興国への投資を行う外国人投資家の投資行動に大きな影響を及ぼすものと考えられる。アジア諸国の株式市場の規模は大きく,新興国向け投資を行う外国人投資家の投資資金の大半を吸収する。外国人投資家の投資行動はグローバルリスクに大きく左右されると考えられるが,ネガティブなグローバルショックの発生による株式の同時売却により,新興国のファンダメンタルズと対内株式投資の関係が希薄化する可能性が示唆された。