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第133号(2026年2月)アジア資本市場研究会特集号

アジア金融政策と為替レートの構造変化

小川英治(東京経済大学経済学部教授)
羅鵬飛(法政大学経営学部准教授)

〔要 旨〕

 本稿は,新型コロナウイルス感染症のパンデミックおよびその後の世界的な金融引き締め局面において,東・東南アジア諸国の金融政策が直面した構造変化と政策自律性の限界を実証的に検証したものである。伝統的な「国際金融トリレンマ」仮説に対し,近年では変動相場制下でも金融政策の自律性が制約されるとする「ジレンマ」仮説が提唱されている。本研究では,2015年から2025年までの月次データを用い,東・東南アジア諸国・地域の金融政策反応関数を推計した。分析の結果,第一に,2020年3月を境に全てのアジア対象国・地域で金融政策ルールに統計的に有意な構造変化が生じたことが確認された。特にASEAN新興国では,パンデミック後の米国利上げ局面において対米金利感応度が顕著に上昇する「再カップリング」現象が観察された。第二に,閾値回帰モデルによる分析から,通貨急落時や米国金利高騰時において,政策反応が非線形的に引き締め方向へシフトすることが明らかになった。インドネシアやタイでは,特定の為替・金利水準を超えると反応係数が極端に上昇しており,強力な通貨防衛行動が裏付けられた。第三に,東アジア諸国では将来の保護主義リスクが現在の金融引き締め要因として作用していることが示された。結論として,ポスト・コロナ期のアジア諸国の金融政策は,外部環境に強く依存する「条件付き自律性」の状態にあり,金利政策のみならず為替介入やマクロプルーデンス政策を組み合わせた統合的な政策対応が不可欠であることが示唆される。

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