第132号(2025年12月)資本市場・企業統治研究会特集号
自社株買いにおける事実上の相対取引の買付手法選択要因
河瀬宏則(福岡大学商学部准教授・当研究所客員研究員)
- 〔要 旨〕
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本研究は,日本企業における自社株買いの多様な買付手法のうち,先行研究で売主主導型とみなされる2つの買付手法,証券市場内で立会時間外に行われる自社株買い(Off Auction Repurchase; 以下OAR)と,証券市場外で公開買付を用いて行われる自社株買い(Tender Offer Repurchase; 以下TOR)を対象に,自社株買い企業がどのように使い分けるのか検証している。本研究はわが国企業が2006年から2023年にかけて実施したOAR 3,376件,TOR 212件の合計3,588件をサンプルとして,買付手法の選択と,買付規模,企業特性,株主構成といった要因のあいだにどのような関係があるかを検証するため,プロビット分析を行っている。本研究の実証結果は買付規模が大きい場合にはTORが,買付規模が小さい場合にはOARが選択される傾向が確認された。さらに,企業規模が小さく,金融機関や外国人投資家の所有割合が高い企業ほどOARを選択しやすいことが明らかとなった。
先行研究の知見を踏まえた本研究の実証結果は,OARとTORがともに事実上の相対取引として機能しており,企業・株主間の関係が買付手法の選択に影響を与えていることを示唆している。そして,本来実施困難な相対取引による自社株買いの規制を修正すべきかどうか,検討するための証拠となるだろう。
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