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第131号(2025年9月)

サステナビリティ関連情報と財務諸表のコネクティビティについて
─包括的な会計基準による対応の問題点─

福澤恵二(共立女子大学ビジネス学部准教授 公認会計士)

〔要 旨〕

 気候変動をはじめとするサステナビリティ関連の情報開示についてISSB(国際サステナビリティ基準審議会)による基準開発が進展する中,サステナビリティ関連情報と財務諸表のコネクティビティ(つながり)への関心が高まっている。前提とされているデータや仮定の整合性といったコネクティビティに関する懸念に対して,会計基準の設定主体であるIASB( 国際会計基準審議会)は主に財務諸表における開示面での対応に焦点を当てた公開草案を2024年7月に公表した。
 しかし,提案された包括的な会計基準による対応には重要性の判断の難しさや実務との乖離の問題があるほか,サステナビリティ関連情報と財務諸表の目的の違いに起因する限界もある。一方,ISSBによって近年開発されたサステナビリティ関連情報の開示基準(全般的要求事項を定めたIFRS S1)にはコネクティビティの問題を明示的に念頭においた複数の要求事項が枠組みとして用意されている。
 コネクティビティの問題への対応としては,気候変動などテーマ毎に開発されるサステナビリティ関連の個別の開示基準において,共通の情報ニーズを踏まえた具体的な開示項目を定めることが効率的かつ効果的である。また,問題の背景に企業が公表する中長期的な計画や目標の実現可能性に対する根本的な疑問があるとすれば,そうした疑問に対しても適切な対応を検討すべきである。

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