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第131号(2025年9月)

企業のリスクテイクからみたライフサイクルと現金の価値の関係

篠﨑伸也(佐賀大学経済学部准教授)

〔要 旨〕

 本稿は2000~2020年度に旧東京証券取引所一部・二部・マザーズ・ジャスダックに上場する企業を対象に企業のリスクテイクがライフサイクル(以下,LC)と現金の価値との関係に与える効果について計量的に分析し,以下の結論を得た。第1に成長期の企業がリスクテイクする場合,現金は市場で高く評価される傾向にあったのに対し,成長期以外のLCに位置する企業についてはそのような傾向は見られなかった。同様に過大投資や過少投資を実施する企業についても,そのような傾向は観察されなかった。よって市場の投資家は,成長期の企業がリスクテイクすることを期待して現金を高く評価していると解釈できる。第2に資金制約の程度が低くリスクテイクを行うグループの方が成長期の現金の価値は有意に高く,成長期にリスクテイクする場合は資金制約が現金の価値を左右すると解釈できる。最後に外国人持株比率が低くリスクテイクしているグループにおいて成長期の現金の価値が概ね有意に高くなることが確認された。この結果は,外国人投資家が成長期の企業の株式を多く保有しない場合,市場の投資家が外国人投資家から利益を収奪されるリスクが低いと判断し,現金を高く評価する可能性が高いことを示唆している。

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