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第131号(2025年9月)

東京株式取引所短期清算市場の日次ベース株価指数の算出
―新東株の市場バロメーター機能の検証―

太田達也(当研究所研究員)

〔要 旨〕

 本稿では,東京株式取引所短期清算市場における日次株価データを整備し,株式分割払込制度をはじめとした戦前期に特有な金融制度や配当の再投資効果を勘案した日次ベース株価指数を算出する。これにより,高頻度データによる新たな分析ツールを提供するとともに,戦前期日本の株式市場の研究領域を拡大することを目指す。
 新東株(東京株式取引所新株)は,株価指数先物が存在しなかった戦前期において,経済一般のあらゆる情報を織り込むとともに,他を圧倒する高い流動性を維持していたことから,市場のバロメーター機能を有していたと考えられていた。このような特性を背景に,新東株は短期的なヘッジ取引にも利用されていたことが指摘されていたが,同銘柄が実際に市場全体の動態に対してどれほど連動していたかは量的に検証されてこなかった。そこで,本稿では,市場平均たる株価指数を用いて,新東株が果たして市場バロメーター機能を有していたのかを分析する。
 分析の結果,新東株は戦間期において株価指数と高い相関を示したが,戦時期においては政府による統制の影響によりその機能が逸失していったことが示唆された。他方で,新鐘株(鐘淵紡績新株)は,戦時統制に対応する経営戦略を講じることで,戦間期だけでなく戦時期においても高い市場バロメーター機能を維持していたことが確認された。

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