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第130号(2025年6月)

NISAと金融教育,金融リテラシー:
『個人投資家の証券投資に関する意識調査』による多年度分析

大野裕之(東洋大学経済学部教授)

〔要 旨〕

 よく知られているように,我が国家計の資産構成は預貯金偏重で,これはさまざまな税制措置を以てしても長く変わらない。そうした政策の一環として2014年にスタートした小額投資非課税制度(NISA)も十分に浸透しておらず,「貯蓄から投資へ」は全く進んでいない。そうした現状を踏まえると,税制が資産選択に及ぼす影響には限界があるのではないかとの疑念が沸き,2024年になされたNISAの大幅拡充にも過剰な期待は寄せられない。こうした中,昨今では各方面で,家計の資産選択行動における金融教育や,それが向上させると考えられる金融リテラシーの果たす役割に注目が集まっている。そこで,本研究は金融教育の経験と金融リテラシーが,NISA利用を促進し,以て「貯蓄から投資へ」を推し進めるかを,日本証券業協会の『個人投資家の証券投資に関する意識調査』の2019年~2022年の個票データを用いて実証的に探った。分析の結果,①金融教育経験と金融リテラシーは概ね有価証券保有額を高める,②金融教育は金融リテラシーを高める,③金融教育,金融リテラシーはNISA利用を促す,との分析結果を得た。こうした結果から,NISA利用を促し,「貯蓄から投資へ」を進めるうえで,金融教育が重要であるとの結論を導く。

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