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第130号(2025年6月)

インターネットやSNSを通じた情報取得が個人投資家の行動に与える影響について

祝迫得夫(一橋大学経済研究所教授)
近藤隆則(京都橘大学経営学部教授)
白須洋子(青山学院大学経済学部教授)

〔要 旨〕

 本稿では,インターネットやSNSを通じた情報取得が個人投資家の行動に与える影響についての既存研究を概観し,また将来の研究の方向性に関して検討する。前半では,2021年初めのGameStop株に関する研究を例に取り,投資家の情報取得のネットワーク構造について検討することの重要性について論じる。インターネットやSNSなどを通じた情報取得の充実は,個人投資家の意思決定をより効率的にする可能性がある。その一方,フェイク情報の氾濫や,情報ネットワークの構造によってエコーチェンバー現象やフィルターバブルが発生し,個人の意見に非効率な偏りが発生してしまうリスクもある。
 また個人の意思決定プロセスに関して,経済学的分析の基礎となっている期待効用最大化の枠組みを超えた,より踏み込んだ分析が今後大きく重要性を増すと考えられる。世界各国における政治対立の二極化や,コロナ・ワクチンに対する陰謀論的な極端な否定意見の流布が示唆するように,人々はしばしば「信じたいものを信じる」傾向があり,合理的な情報があっても意見を変えないことがある。情動(emotions)や社会的関係性の影響が個人の意思決定に果たす役割について考えるために,今後は社会心理学や脳科学の視点からの分析を,経済学的な個人の金融経済行動の分析に取り入れる必要がある。合わせて,日本でも個人投資家のデータを利用した実証研究が,より一層進むことが望まれる。

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タグ

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