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第116号(2021年12月)

米国私募市場におけるプロ投資家とは:
自衛力認定投資家の定義の見直し

若園智明(当研究所主席研究員)

〔要 旨〕

 本稿は,米国のいわゆる私募市場の主要な投資家である自衛力認定投資家の定義に関して,2020年に実施された米SECの改正を分析対象とする。これまでもSECは,複数回にわたって自衛力認定投資家の定義の見直しを試みてきた。過去に提案された規則改正案は,特に自然人の定義に関して,所得や純資産などの金融的基準がインフレ率に従って調整されていないことを問題視しており,実質的な基準の緩和により自然人の自衛力認定投資家数が増加している現象に対して投資者保護の観点から手当てする試みであった。対して今回のSEC改正は,これまでSECが主張してきたインフレ調整を見送る一方で,1933年証券法が記す金融的な洗練性を私募取引の代表的なセーフハーバーであるRegulation Dに導入している点が特徴となる。過去の改正案と比較して,スタートアップ企業の資本等の調達の多様化や未公開企業等への投資機会の拡大に重点を置いた改正と言えよう。しかしながら,自然人の金融的洗練性を担保すべく提示された具体的な施策をみると,証券外務員や投資顧問業の資格試験が採用されていることから,単純に自然人(個人投資家)の自衛力認定投資家数の増加を目的としているわけではなく,既存の金融サービス業者を経由した資本形成の促進策と捉えることが適当であろう。

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