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第110号(2020年6月) 株式市場研究会特集号(下)

入札における辞退と談合とその対策について—公共工事入札を事例とする考察—

辰巳憲一(学習院大学名誉教授・日本大学大学院講師)

〔要 旨〕

 入札に必要な書類を準備し提出しておきながら,あるいは(幸運にも)落札しながら,辞退する業者が目立って現れているというような事態が注目されるようになっている。このような辞退だけでなく,入札参加の可否,1者入札,再入札などに係わる入札行動の分析が十分ではないのに入札が行われ続けられていることを示唆する事例が,公共工事入札などにおいて,度々起こっている。
 本稿は,入札に参加しながら,どこかの段階で辞退するという従来研究されていないテーマを,主として談合と係わらせて問題提起し,それをもたらした制度の背景や実情を詳しく展開する。入札の仕組みも簡単であるが触れることになる。
 入札辞退は談合の一形態ではないのかという疑問が提起されている。他のすべての入札参加者が辞退してしまえば,実際,1者入札になってしまう。それゆえ,「ある特定の1社を落札させるために,他社が談合して辞退する」ケースが存在しえる。そして,そう疑う向きがいても不思議ではない。
 しかしながら,辞退する理由は多数あり,しかも,辞退にペナルティが課されるケースもある。それゆえ,辞退,1者入札,再入札と関連する入札制度と談合問題に対して多面的に考察する必要がある。
 入札辞退は,一体談合なのか,あるいは入札制度の欠陥からもたらされる制度設計上の問題なのか。さらに制度運営上の問題で起こったのかもしれない。例えば,設定ミスで下限価格が高すぎる,辞退届が煩雑である,などの制度運営上の問題も考えられる。これらの点を本稿は考察する。
 入札辞退で容易に談合できるのだろうか。辞退するためには発注者に対して届を提出しなければならないので,誰が辞退しているかは明々白々な情報になる点が他の談合の形態では見られない特徴である。そして,辞退した場合に課されるペナルティつまり辞退のコストは非常に高いと予想される。それゆえ入札辞退による談合に係るネットの利益は相対的に低くなり,談合は行いにくくなる。
 辞退するとペナルティが課されるだけでなく,辞退しようにもその手続き自体に多くの煩雑な手数がかかるため,入札辞退が談合に繋がる可能性は高くないように理解されるのである。

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