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第107号(2019年9月)

少額投資非課税制度(NISA)の計量経済学分析
—2014年『個人投資家の証券投資に関する意識調査』を用いた限界効果
の分析—

大野裕之(東洋大学経済学部教授)
林田実(北九州市立大学経済学部教授)
安岡匡也(関西学院大学経済学部教授)

〔要 旨〕

 少額投資への非課税制度であるNISAは,2014年1月に導入され,業界あげてその発展が期待されている。しかし,この制度には様々な欠点や不足点が指摘されており,それを反映してか,口座数こそ順調に伸びているが,金融商品の買付総額は伸び悩んでいる。そこで本稿は,『個人投資家の証券投資に関する意識調査』2014年版の個票データを用いて,NISAに関する意見形成・投資行動が,どのような要因によって決定されているかを探った。
 具体的には,「口座開設の有無」,「利用目的」,「商品購入の有無」,「商品購入をしない理由」,「申し込まない理由」,「最も改善してほしい点」に関する選択肢の選択確率に与える,金融総資産,世帯年収,年齢,性別,株式保有の有無,投信保有の有無の影響を,多項ロジットモデルで推計した。その結果,利用目的に関して,「子供の教育のため」の回答数が意外にも少なく,投信保有だけが,その選択確率を押し上げる一方,金融総資産,世帯年収,年齢,性別,投信保有のいずれも,「老後資金」の選択確率を高めた。NISAは子供のためというよりは,自分たちの老後のために利用されている可能性が示唆される。NISAを申し込まない理由や改善点についても,金融総資産は各回答選択肢によく影響を与えている一方,年齢があがると改善希望は少なくなる。総じて投信保有は他の説明変数に比して,影響が大きい。投信保有層は,NISAに関して明確な意見を持っていることなどが示唆された。

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