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第66巻第7号(2026年7月)

〔論稿〕高齢者による有価証券保有

宮本 佐知子(当研究所シニアフェロー(特別研究員))

一 はじめに

日本の高齢化は着実に進行している。2025年に団塊の世代(1947年から1949年生まれ)は全員、75歳以上の後期高齢者になった。総務省統計局「人口推計」(2026年1月1日現在)によると、65歳以上人口は3,619万人、総人口に占める割合(以下、「高齢化率」という。)は29.4%となった1)。日本の高齢化率は今後も高水準が続くと見込まれている。

しかし、高齢者の金融行動の実態、金融資産をどのように選択しているのか、どのように考え活動しているのかなど、高齢者の金融資産を巡る実際の姿については、実はわかっていないことも多いように思われる。

以下、日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」(2024年度)の匿名個票データを基に分析した高齢者の状況について述べていきたい。同調査については、以前、本誌においてより広範な観点で分析を行ったが、今回は、高齢者に焦点を当てる形で分析を行っていく2)

なお、「証券投資に関する全国調査」は、日本証券業協会が3年間隔で実施する調査であり、1962年に開始され、最新の調査は2024年度調査である。調査対象は全国、18歳以上の男女個人であり、標本数の7,000サンプルは国勢調査と同様の人数分布、性別・年代分布になるように抽出されている。20歳以上の全てのサンプルは5歳年齢階級で分類され、65歳以上は6階級あり、最高年齢階級は90歳以上となっている。

「証券投資に関する全国調査」の特徴は、個人単位で調査が行われていることである。例えば、金融商品についての設問では、自分の名義で保有する金融商品について回答し、家族と共有している金融商品についても自分の持ち分と思われる金額を回答することが求められる。金融商品の保有状況に関する実態調査は政府機関によっても行われているが、その場合には個人単位ではなく世帯単位での調査が行われている。また近年は、政府機関でもインターネットを通じた調査が増えているが、「証券投資に関する全国調査」では調査員が調査対象者宅を訪問し、調査目的や内容を説明して調査票を渡し、後日再訪問して回答を回収する。調査対象者は目的や内容を理解した上で、時間をかけて回答することができるので、調査の精度はインターネット調査に比べて高いものと考えられる。また、調査対象となっている金融商品にも特徴があり、金融商品の商品区分は、預貯金、信託、株式、投資信託、公社債、デリバティブ商品となっており、保険等は含まれていない。

二 有価証券の保有状況

ここからは、「証券投資に関する全国調査」のデータ分析から得られた知見について、幾つか紹介したい。まず、有価証券を保有している人の割合(以下、「保有率」という。)という観点から、特徴を捉えるために重要なポイントについて見てみたい。

⑴ 全国調査全体における有価証券の保有率

まず、調査全体での有価証券保有率の現状を確認する。調査直近年の2024年は、有価証券は24.1%であり、4人に1人は有価証券を保有している(図表1)。商品別で最も多いのは「株式」であり、次いで「投資信託」もほぼ同じ割合で保有されており、「公社債」は限られた人に保有されている。

図表1 有価証券、株式、投資信託、公社債の保有率

図表1 有価証券、株式、投資信託、公社債の保有率

〔出所〕 日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」(2024年度)より筆者作成

近年の有価証券の保有状況を調査形式・カテゴリーが現在のものになった2012年から振り返ると、2012年の17.1%から2018年まではほぼ横ばいだったが、2021年から上昇し、2024年は24.1%である。商品別には、株式の保有率は緩やかな上昇である一方、投資信託の保有率が2018年から上昇しており、株式に迫りつつある。この間、公社債は低下が続いている。

このような有価証券の保有率が上昇した背景には、良好な相場環境と税制面での変化もあった。2012年は第二次安倍政権の始動した年であり、TOPIXは同年にバブル崩壊後の最安値となった後は上昇基調に転じ、2024年にはバブル期の高値を35年ぶりに上回り、過去最高値をつけるに至った。証券税制面では、2014年には上場株式配当・譲渡益の軽減税率が本則税率に戻るとともに少額投資非課税制度(以下、「NISA」という。)が開始され、2016年からつみたてNISA、2024年からは新NISAが開始されている。

⑵ 年齢階層別の有価証券の保有率とその変化

次に、これらの有価証券保有率の変化を5歳年齢階層別に見ると、2024年時点の有価証券の年齢階層別保有率は年齢が上がると共に上昇し、最も高いのは65-69歳の年齢階層の33%となっている(図表2)。その上の年齢階層では保有率は次第に低下していくが、75-79歳の年齢階層では50-54歳の年齢階層と同じ水準、85-89歳の年齢階層でも14%である。

図表2 年齢階層別の有価証券保有率

図表2 年齢階層別の有価証券保有率

〔出所〕 日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」(2024年度)のデータを基に筆者計算

このような年齢階層別保有率を図にしたときの山形の形状は長期間見られている傾向だが、2012年と比べると2024年はほとんど全ての年齢階層で保有率が上昇している。最も上昇幅が大きかったのは30-34歳の年齢階層であり45-49歳の年齢階層までの各年齢階層で11~13%ポイント(以下、「pt」という。)上昇した一方、65-69歳の年齢階層から85-89歳の年齢階層では3~6%pt上昇(ただし80-84歳の年齢階層は2%pt低下)にとどまっており、最近の有価証券保有率の上昇は若中年層が中心に上昇をけん引してきたと言えるだろう。

商品別に見ると、若年層・中年層は投資信託の保有率が最も高いが、55-59歳の年齢階層以降になると株式の保有率が最も高くなる。直近(2024年)の株式の年齢階層別保有率の形状は、有価証券の年齢階層別保有率の形状と似ており、年齢が上がると共に上昇し、最も高いのは60-64歳の年齢階層の21%となっている。その上の年齢階層では株式の保有率は次第に低下していくが、75-79歳の年齢階層でも50-54歳の年齢階層よりも高い水準であり、85-89歳の年齢階層でも10%である。このような年齢階層別保有率の山形形状は2012年時点でも同様であったが、2012年に比べると2024年は多くの年齢階層で保有率が上昇していた。

投資信託の年齢階層別保有率も同様の山形の傾向だが、近年、若年層・中年層の保有率が上昇しているため、若年側の裾野が盛り上がったやや台形型の形状に変化していることが特徴である。2024年調査では年齢階層別のピークは65-69歳の年齢階層の18%だが、25-29歳の年齢階層から10%前後の保有率となっている。2012年に比べると、最も上昇幅が大きかった40-44歳の年齢階層では10%pt上昇したほか、25-29歳から55-59歳までの各年齢階層では6~10%pt上昇していた。

公社債の年齢階層別保有率は、他資産と同様に山形となっているが総じて保有率が低い。年齢と共に緩やかに上昇し、最も高いのは60-64歳の年齢階層の5%、その後の年齢階層も80-84歳の年齢階層までほぼ横ばいという状況である。2012年に比べると公社債の保有率はほぼ全年齢階層で低下しているが、これは公社債には株式や投資信託で見られたようなNISAによるプラス効果がなかったことに加えて、長く続いた低金利環境で債券投資の利回りを期待できなかったことの影響等もあろう。

このように年齢階層別の有価証券の保有率は、若年層・中年層の資産形成期を通じて上昇し、退職期でピークアウトするものの、高齢期に入ってもそれほど大きくは低下しないというのがデータから観察されている内容である。その中で、直近でNISA導入が特に若年層・中年層の投資信託保有率の上昇に影響していることが推測されるというのが一つの特徴だが、もう一つ目立っている特徴としては、株式投資を長く行ってきたとみられる高齢層は、高年齢になったからと言って投資を止めるわけではなく、年齢を重ねてもそのまま投資を継続していると考えられることである。次章以降では、高齢層についてより深く掘り下げたい。

三 高齢者による有価証券の保有状況

⑴ 金融資産額別の高齢者による有価証券保有率

ここからは、「65歳以上の高齢層」(以下、「高齢者」という。)に注目し、有価証券保有率について2024年調査を基に金融商品保有額(以下、「金融資産額」という。)と収入との関係を見ていく。

まず、金融資産額については、一人当たり平均金融資産額は年齢が上がるにつれて大きくなり、65-69歳の年齢階層で一段と大きくなり、75-79歳の年齢階層で最も大きくなる。それ以降は資産額が少しずつ小さくなるものの、85-89歳の年齢階層でも55-59歳の年齢階層が持つ資産額を上回っている(宮本(2025))。なお、本稿での議論は有価証券の保有率に焦点を当てており保有額の議論は扱わないが、宮本(2025)の分析では有価証券/金融資産比率は30-34歳の年齢階層が最も高く、次いで65-69歳の年齢階層である。30歳代から70歳代までの各年齢階層はそれぞれ22~30%の範囲内であり、80歳代になるとようやく緩やかに低下するが80-84歳の年齢階層でも21%と高いまま台形化している。

また、各年齢階層における金融資産額分布の形状を見ると、55-59歳の年齢階層以下は資産額の山(最頻値)は一つの単峰型だが、60-64歳の年齢階層以降になると山が2つある二峰型になり、両裾野に広がる形状になっていく。75-79歳の年齢階層までは高い方の山の相対度数が増えていく。80-84歳の年齢階層を超えると低い方の山の相対度数が増えていくため、金融資産を取り崩す人が増えていくと見られる。

次に、金融資産額と有価証券の保有状況との関係だが、全世代では金融資産額が増えるほど有価証券保有率は上昇する傾向が見て取れる。高齢者でも65-69歳の年齢階層から85-89歳の年齢階層までは同様の傾向、つまり金融資産額が増えるほど有価証券保有率が上昇する傾向が見られる(図表3)。年齢階層が上がるほど水準はやや下がるものの、金融資産額が1,000-3,000万円を超えると有価証券保有率は50%を超えていく。

図表3 金融資産額階層別の有価証券保有率(2024年)

図表3 金融資産額階層別の有価証券保有率(2024年)

〔出所〕 日本証券業協会「証券投資に関する全国調査」(2024年度)のデータを基に筆者計算

商品別に高齢者の保有率と金融資産額との関係を見ると、株式については、金融資産額が増えるほど保有率が上昇する傾向が見られる。上述した有価証券全般に比べると、総じて保有率はやや低いものの年齢階層ごとのばらつきは小さく、金融資産額が増えるほど保有率が上昇する傾向がより明確になる。金融資産額が3,000-5,000万円を超えると保有率は50%を超えていく。

投資信託も、高齢者の金融資産額が増えるほど保有率が上昇する傾向が見られる。上述した有価証券全般に比べると、総じて保有率は低く年齢階層ごとのばらつきも大きい。金融資産額が3,000-5,000万円を超えると保有率が50%を超える年齢階層もある。

公社債についても、高齢者の金融資産額が増えるほど保有率が上昇する傾向が見られる。上述した有価証券全般に比べると、保有者数が限られ保有率はきわめて低い。金融資産額が3,000-5,000万円を超えると、年齢階層ごとのばらつきもあるものの、保有率が上昇する傾向にある。

つまり、高齢者による有価証券保有について、「金融資産額が多くなると、株式、投資信託、公社債すべての保有率が上昇していく」、という点が実際のデータとしても改めて確認されたと言える3)

⑵ 年収別の高齢者による有価証券保有率

次は、高齢者の収入と有価証券保有率の関係を見てみよう。まず高齢者の年収の平均値を見ると、多くの人が退職する65歳以降の収入は緩やかに減少していく形になっている。主な収入が年金であると想定される100-200万円の年収階層の人数が増える中で、平均年収が低下していくのが特徴である。ただし、65-69歳から80-84歳までの各年齢階層でも2,000万円以上の収入を得ている人もいる。

年収と有価証券保有率との関係だが、高齢者以外も含めた全世代では年収が増えるほど有価証券保有率が上昇する傾向が見て取れる。しかし高齢者のみで見ると、年収と有価証券保有率との関係において、明確な関係を見出しづらくなる。

商品別に高齢者の保有率と年収との関係を見ると、株式と投資信託で概ね300-400万円、公社債で概ね400-500万円のラインを超えると、保有率が30%を超える。そして保有率が50%を超えるのは、株式で概ね年収400-500万円、投資信託で概ね500-700万円のラインである。ここまでは高齢者の年収と有価証券の保有率について一定の関係が観察されるが、それ以上の年収層、それ以上の保有率については、明確な関係は観察されない4)

⑶ 高齢者の有価証券投資についての各種観察

ここからは、「証券投資に関する全国調査」から分かった高齢者の有価証券投資における行動事例について紹介していきたい。

1)現在有価証券を保有する人の行動

<株式保有銘柄数>

現在株式を保有している人について、一人当たりの保有銘柄数を見ると、全世代平均は5.1銘柄である。1銘柄しか持っていない人の割合は、20-24歳の年齢階層が最も高く、次いで50-54歳の年齢階層と60-64歳の年齢階層である。

これに対して、65-69歳以上の各年齢階層とも、2銘柄以上保有する割合が多くなっている。また11銘柄以上保有する人は80-84歳までの各年齢階層において一定数観察され、年齢層として少ないサンプル数ではあるが、85-89歳、90歳以上の各年齢階層においても、7銘柄以上保有している人は複数名観察される。

ポートフォリオ分散の観点から見ると、高齢層の方が若年層・中年層より、銘柄分散を行うなどスキルが高い可能性が推測される。

 <株式保有動機>

現在株式を保有している人の株式購入理由(複数回答)を見ると、全世代で「配当がもらえるから」が最も多く、次いで「長期にわたっての資産運用として」と「株主優待が受けられるから」が多い。

65-69歳以上の各年齢階層でも、同様に「配当がもらえるから」が最も多く、次いで「長期にわたっての資産運用として」と「株主優待が受けられるから」が多い。70-74歳の年齢階層と75-79歳の年齢階層では、「配当がもらえるから」の次に「株主優待が受けられるから」が多い。若年層・中年層も高齢層も基本的に同様に、「配当をもらえることが株式投資の最大の理由である」、「投資期間は長期を志向している」、「株主優待も楽しんでいる」、が株式の保有動機となっていると言えるだろう。

ただし、65-69歳以上の各年齢階層において、以前は株式を保有していたが現在は保有していない人の回答を見ると、「配当がもらえるから」が最も多い点は現在株式を保有している人と同じだが、次いで「短期の値上がり益を期待して」が多かった。高齢層の中でも、「短期値上がり志向」の高齢層が撤退し、投資を続けている高齢層と新たに参入してきた高齢層が合わさる中で、高齢層全体として「長期投資志向」の比率が上昇していることが伺える。

 <投資信託保有動機>

現在投資信託を保有している人の投資信託購入理由(複数回答)を見ると、全世代では「長期にわたっての資産運用として」が最も多く、次いで「積立て投資ができるから」と「比較的少額でも投資できるから」が多い。65-69歳以上の各年齢階層では、「長期にわたっての資産運用として」が最も多く、次いで「定期的に分配金が受け取れるから」が多い。若年層・中年層・高齢層とも「長期分散投資のツール」として投資信託を利用していることが観察される。

ただし、65-69歳以上の各年齢階層において、「以前は投資信託を保有していたが現在は保有していない人」の回答を見ると、「定期的に分配金が受け取れるから」が最も多く、次いで「長期にわたっての資産運用として」が多い、というように、現在の高齢層の投資信託保有者とは優先順位が逆になっていた。以前の投資信託保有者は、当時の金融各社のプロモーションを受けて毎月分配型商品を購入していた可能性が高そうだが、現在の投資信託保有者は高齢層も含めて、以前と判断基準が変わっていることが観察された。

 <公社債保有動機>

現在公社債を保有している人の公社債の購入理由(複数回答)を見ると、全世代では「比較的安全だから」が全ての年齢階層で最も多く、次いで「預貯金に比べて利回りが有利だから」が多い。

65-69歳以上の各年齢階層においても、同様に「比較的安全だから」が最も多く、次いで「預貯金に比べて利回りが有利だから」が多い。また、65-69歳以上の各年齢階層で、以前公社債を保有していたが現在は保有していない人の回答を見ても同様に、「比較的安全だから」が最も多く、次いで「預貯金に比べて利回りが有利だから」が多い。公社債は、現在保有している人よりも以前保有していたが現在は保有していない人の方が多く、特に65-69歳以上の各年齢階層は以前保有していた人が多いことも特徴である。65-69歳以上の各年齢階層では公社債投資への不満として、期待したほど利回りがなかったことを挙げる人が特に多い。

したがって、比較的安全であること、預貯金に比べて利回りが有利であることが、公社債投資の最大の理由であることは、高齢者も含めて公社債を保有する全ての世代に共通している。ただし近年はゼロ金利政策が採られてきたこともあり、利回りの水準への不満から公社債投資をやめる人も多い。

2)金融資産を保有する人の行動と意識

<収入対比の金融商品購入比率>

ここからは有価証券の有無を問わず金融資産保有者の行動と意識を見ていく。金融資産を保有する人が月々の収入から金融商品にまわす割合は、全世代の回答では「金融商品にはまわしていない」が最も多く、まわす人の中でも「1~10%未満」が最も多く、次いで「10~20%未満」である。

65-69歳以上の各年齢階層では、「金融商品にはまわしていない」が最も多く、次いで「該当する収入はない」が多く、両者の回答は年齢が高くなるほど多くなる。月々の収入から金融商品にまわす人の中では、「1~10%未満」が最も多く、次いで「10~20%未満」であるが、「20~30%未満」から「50%以上」までも一定数いる。

したがって、高齢者では月々の収入から金融商品にまわしていない人の割合や、そもそも該当する収入がない人の割合も増える。一方で、月々の収入から金融商品にまわす人も一定割合いて、配分も「1~10%未満」が最も多いものの、「20~30%未満」から「50%以上」までも一定数いることから、一人ひとりの収入事情とその配分の仕方において高齢者は若年層・中年層以上に大きな違いがあるということだろう。

 <有価証券の購入意欲>

金融資産を保有する人が今後、有価証券を購入したいと考えているかについては、ほぼ全ての年齢階層で購入したいと考えている人がいる。全世代の回答では商品別には、株式と投資信託が中心で両者はほぼ同じ割合である一方、公社債の購入希望者はその1/3以下の割合に限られる。有価証券の購入時期については、「時期は未定だが購入してみたい」人の方が「今後1年以内に購入したい」人よりも多い。

65-69歳以上の各年齢階層で見ると、有価証券を購入したいと考えている人の割合は次第に低下していくものの、85-89歳の年齢階層でも有価証券を購入したいと考えている人はいる。商品別には、株式を購入したいと考えている人は、投資信託や公社債よりも多い。購入時期については、「時期は未定だが購入してみたい」人よりも、「今後1年以内に購入したい」人の方が多い。

したがって、有価証券を購入したい人は全ての世代にいること、高齢者でも、85-89歳の年齢階層になっても、有価証券を購入したいと考えている人はいる。また、高齢者は今後1年以内に購入したい人が相対的に増えてくることから、行動に移すことをより現実的に検討していると考えられる。高齢者で有価証券を購入したい人は現在有価証券を既に保有している人も多く、高齢者は現役時に購入した有価証券をそのまま持ち続けているだけでなく、高齢期においても有価証券を追加購入したり、ポートフォリオを見直している人もいることを示していよう。商品別には株式の方が投資信託よりも購入希望者が多いことは、実際の保有状況の統計とも整合的である。

 <証券投資の知識習得>

金融資産を保有し証券投資は必要だと思う人が、証券投資に関する知識を習得する場合、どのような方法が良いかについては(複数回答)、全世代では「中立的な機関(大学・金融団体・証券取引所など)が実施する無料のセミナーへの参加」が最も多く、次いで「国や地方公共団体が運営する公的な機関が実施する無料のセミナーへの参加」と「周囲の投資経験者からの意見やアドバイス」が多い。

65-69歳以上の各年齢階層で見ると、「証券会社や金融機関などの担当者からの説明」が最も多く、次いで「新聞やテレビ、ラジオからの情報」と「中立的な機関が実施する無料のセミナーへの参加」が多い。また、65-69歳以上の各年齢階層で見ると、「わからない」との回答がやや多くなる。一方で、限られたサンプルではあるものの90歳以上の年齢階層では男女ともに「証券会社や金融機関などが実施するセミナーへの参加」が最も多く、次いで「証券会社や金融機関などの担当者からの説明」、「新聞やテレビ、ラジオからの情報」となっている。

したがって、証券投資に関する知識の習得方法は、高齢期になっても様々な方法が採られており、新聞などメディアで自ら情報を得つつ、証券会社や金融機関などの担当者からの情報、証券会社や金融機関などが実施するセミナーの情報といった、対面で情報を得ることも重視されている。ただし、65-69歳以上の各年齢階層で「わからない」と回答する人もやや多くなっていくことから丁寧なサポートも求められるのだろう。

一方で、調査の中で興味深かった点としては、90歳以上の年齢階層の回答において、「証券会社や金融機関から対面で情報を得ることが望ましい」との回答割合が多かったことが挙げられる。90歳以上の年齢階層で投資を行っている人たちは、情報収集意欲も衰えておらず、積極的に活動していると見られる。

高齢者に対して、年齢という要素だけで一律に取り扱い、投資対象に制約をかけることもあろうが、実際には、「高齢だから投資判断能力に衰えが見られる」と決めつけるのは早計のようだ。個々の差が大きくなることもあり、高齢者を年齢だけで一括りに取り扱うことは適切ではないと考えられる。

四 終わりに

⑴ まとめ

本稿では高齢者による有価証券の保有の実態を中心に、個人単位での調査結果を基に分析してきた。第二章では、家計全体での有価証券の保有率を調査形式・カテゴリーが現在のものになった2012年から振り返ると、2012年の17.1%から2018年まではほぼ横ばいだったが、2021年から上昇し、2024年は24.1%となっている。株式の保有率が緩やかに上昇する中で、投資信託の保有率はNISA開始以降の上昇が大きく、株式の保有率に迫りつつある。

また、有価証券の保有率を年齢階層別に観察した。若年層・中年層の資産形成期を通じて上昇し、退職期でピークアウトするものの、高齢期に入ってもそれほど大きくは低下しないというのがデータから観察されている内容である。その中で、直近でNISA導入が特に若年層・中年層の投資信託保有率の上昇に影響していることが推測されるというのが一つの特徴だが、もう一つ目立っている特徴としては、株式投資を長く行ってきたとみられる高齢層は、高年齢になったからと言って投資を止めるわけではなく、年齢を重ねてもそのまま投資を継続していると考えられることである。

第三章では、「65歳以上の高齢層」に注目し、有価証券の保有率について、資産との関係、収入との関係を見た。資産との関係については、株式、投資信託、公社債とも正の関係が実際のデータとしても改めて確認された。収入との関係においては、株式と投資信託で概ね300-400万円、公社債で概ね400-500万円のラインを超えると、保有率が30%を超える、株式で概ね400-500万円、投資信託で概ね500-700万円のラインを超えると保有率が50%を超える、という関係が観察された。ただし、それ以上の年収層、それ以上の保有率については、明確な関係は観察されなかった。

また第三章では、「証券投資に関する全国調査」から分かった高齢者の有価証券投資における行動事例についても述べている。株式保有銘柄数については、高齢者の保有銘柄数は、若年層・中年層より多く、ポートフォリオ分散の観点から見ると、高齢層の方が若年層・中年層より、銘柄分散を行うなどスキルが高い可能性が推測された。

株式保有動機については、若年層・中年層も高齢層も基本的に同様に、「配当をもらえることが株式投資の最大の理由である」、「投資期間は長期を志向している」、「株主優待も楽しんでいる」、が株式の保有動機となっている。加えて、高齢層の中でも、以前に一定数存在した「短期値上がり志向」の高齢層が撤退し、投資を続けている高齢層と新たに参入してきた高齢層が合わさる中で、高齢層全体として「長期投資志向」の比率が上昇していることが伺えた。

公社債保有動機としては、比較的安全であること、預貯金に比べて利回りが有利であることが、公社債投資の最大の理由であることは、高齢者も含めて公社債を保有する全ての世代に共通している。ただし近年はゼロ金利政策が採られてきたこともあり、利回りの水準への不満から公社債投資をやめる人も多かったようだ。

収入対比の金融商品購入比率は、全世代の回答では「金融商品にはまわしていない」が最も多く、まわす人の中でも「1~10%未満」が最も多く、次いで「10~20%未満」であったが、高齢者では月々の収入から金融商品にまわしていない人の割合や、そもそも該当する収入がない人の割合も増えていた。一方で、月々の収入から金融商品にまわす人も一定割合いて、配分も「1~10%未満」が最も多いものの、「20~30%未満」から「50%以上」までも一定数いることから、一人ひとりの収入事情とその配分の仕方において高齢者は若年層・中年層以上に大きな違いがあると考えられた。

有価証券の購入意欲としては、全世代では、株式と投資信託が中心で両者はほぼ同じ割合である一方、公社債の購入希望者はその1/3以下だった。一方、高齢者では株式を購入したいと考えている人が、投資信託や公社債よりも多かった。さらに高齢者は、購入時期についても、「時期は未定だが購入してみたい」人よりも、「今後1年以内に購入したい」人の方が多く、これは若年層・中年層とは逆の回答だった。また高齢者では現在有価証券を既に保有している人が多いが、有価証券をそのまま持ち続けているだけでなく、高齢期においても有価証券を追加購入したり、ポートフォリオを見直している人もいることを示していると考えられた。高齢者において、株式の方が投資信託よりも購入希望者が多いことは、実際の保有状況の統計とも整合的である。

証券投資の知識習得については、全世代では「中立的な機関が実施する無料のセミナーへの参加」が最も多く、次いで「国や地方公共団体が運営する公的な機関が実施する無料のセミナーへの参加」と「周囲の投資経験者からの意見やアドバイス」が多かった。一方、高齢者では、「証券会社や金融機関などの担当者からの説明」が最も多く、次いで「新聞やテレビ、ラジオからの情報」と「中立的な機関が実施する無料のセミナーへの参加」の順だった。

一方で、調査の中で興味深かった点としては、90歳以上の年齢階層の回答において、「証券会社や金融機関から対面で情報を得ることが望ましい」との回答割合が多かったことが挙げられる。90歳以上の年齢階層で投資を行っている人たちは、情報収集意欲も衰えておらず、積極的に活動していると見られる。

高齢者に対して、年齢という要素だけで一律に取り扱い、投資対象に制約をかけることもあろうが、実際には、「高齢だから投資判断能力に衰えが見られる」と決めつけるのは早計のようだ。高齢者の有価証券を巡る行動は様々であり、年齢を基準にした一律の行動制限を設けることは適切ではないだろう。「高齢社会対策大綱」においても、「我が国の平均寿命は世界で最も高い水準となり、高齢者の体力的な若返りも指摘されている。また、65歳以上の就業者等は増加し続けており、その意欲も高い状況にある。このような状況を踏まえれば、65歳以上を一律に捉えることは現実的ではない。」とされている。

⑵ 今後へ向けて

以上が高齢者の有価証券投資についての状況や行動事例について、「証券投資に関する全国調査」の匿名個票データから観察できたことだが、データ観察から離れてより鳥瞰的な視点から高齢者の置かれている環境について考えてみる。

直近までの経済環境、つまりマイナス金利政策や低金利環境は、高齢者のライフサイクルの観点から見ると、「自らが資産を蓄積してきたにも関わらず、これまで金利収入を得られなかった」ということである。しかし、現在、一転して「金利がある世界」が到来してみると、自らの資産に対して金利収入を得られなかったという状態が逆転しつつあるものの、同時に「インフレへの対処」という新たな課題に高齢者は直面しつつある。

また高齢期は、資産計画の時間軸である自らの寿命がそもそもわからないこと、それよりも早期に体の機能不全が訪れる可能性があること、脳の機能の問題においても良く取り上げられる認知症だけではなく、加齢に伴う脳機能の変化によって様々な不自由さが起こる可能性があること、などを将来のリスクとして自ら考えておく必要がある。これらのリスクは自身がそれまで経験したことのない変化であり、誰もが漠然と不安を抱いている。このような不安を少しでも予め解消しておきたいという潜在的ニーズは非常に大きいだろう。

さらに、高齢期には相談する相手である家族や知人が少なくなっていき、頼れる先が限られるという問題もある。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると2040年には一人暮らしの高齢者は1,000万人を超える。金融詐欺などから守り、困った時に頼れる相談先が求められている。ただし高齢者にとって望ましい仕組みとは、一括委任/受任だったり、本人や家族を長期間縛るような契約ではないだろう。様々な知識段階の人がおり、相談の種類が様々であることも鑑みると、公正さを担保できると同時に高齢者にとってのニーズ・要望の変化に応じた段階的な対応、柔軟性も兼ね備えることが必要だろう。たぶん高齢者にとって相談できる公正な相手先が複層的に重なりあっているというのが理想的なイメージだろう。

高齢社会のトップランナーである日本では、今後求められる施策を検討するにしても、お手本となる国はない。日本の実際の姿を踏まえたうえで、どのような施策が望ましいかを議論していくことが求められよう。

注釈

  1. 1) 令和2年国勢調査を基準とする確定値。
  2. 2) 宮本(2025)。一般に高齢者は65歳以上人口と定義されていることから、本稿でもそれに倣うこととする。
  3. 3) なお、90歳以上になるとサンプル数が限られることもあり、同じ傾向は見出しづらくなる。
  4. 4) サンプル数が限定されていること、さらに年収の高い層では収入の源泉が一様でないこと(例えば、同じ高齢層でも、現役を続けている場合と不動産所得などが中心の場合など)が理由となっている可能性があろう。

(参考文献)

  • 国立社会保障・人口問題研究所(2025)「日本の世帯数の将来推計(全国推計)令和6年推計」
  • 総務省統計局(2026)「人口推計」(令和8年6月19日)
  • 内閣府(2024)「高齢社会対策大綱」(令和6年9月13日閣議決定)
  • 日本証券業協会(2025)「証券投資に関する全国調査(2024年度)」
  • 宮本佐知子(2025)「日本家計の有価証券保有と分布」『証券レビュー』第65巻第7号、65-80頁、公益財団法人日本証券経済研究所