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第3号(2026年4月)

投稿論文 無料発信型フィンフルエンサーの投資助言業への該当性
―アテンション・エコノミーの視角を交えて―

中村篤志(新潟大学経済科学部准教授)

〔要 旨〕

 近年,ソーシャル・メディア・プラットフォーム(SMP)上で,「無料」で投資判断等を発信するフィンフルエンサーが台頭している。特に若年層では,各種SMPが資産運用等に関する主要な情報源となっている。しかしながら,金商法上の投資助言業にかかる規制が,無料発信型フィンフルエンサーにも及ぶかは明らかではない。本稿では,フォロワー等のアテンションが収益に直結するアテンション・エコノミーの視角も交えつつ,それらの行為が投資助言業に該当し得ることを論じる。
 第1に,投資助言業の構成要件である報酬の収受について検討する。無料発信型フィンフルエンサーがSMP運営者から得る収益は,形式的には第三者からの支払いであるが,その経済的価値の源泉は,「助言」の相手方であるフォロワー等のアテンションにあるとも捉えられる。日本が参考とした米国投資顧問法では報酬概念を実質的かつ広範に解釈している点,フォロワー等に投資者としての要保護性が存在する点も考慮すると,SMPからの報酬を,実質的に「助言」の相手方からの報酬と解釈する余地があることを示す。
 第2に,新聞等の投資情報出版業を投資助言にかかる規制対象から除外する規定へのSMPの該当性を検討する。旧来型の出版物と異なり,SMPはアルゴリズムによる情報の属人化や,ダイレクトメッセージ等を通じた双方向型コミュニケーションを可能にする。米国の判例等も参考にすると,SMPのかかる構造的特性は,個別・相対性の高い「助言」を生み出す面があるため,上記除外規定の適用対象とすることは妥当ではないことを示す。
 以上のとおり,デジタル化社会の進展も踏まえ,無料発信型フィンフルエンサーの行為を実質的かつ目的論的に解釈すると,かかる行為は投資助言業に該当し得ると結論付ける。ただし,本稿は,SMP上の発信内容に関して一定の前提を置いた下での序論的考察であり,一層の研究の余地がある。

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