第2号
記事 証券・金融商品トラブルへの対応―FINMACの運営状況―
高橋康文(証券・金融商品あっせん相談センター専務理事兼センター長)
【訂正のお知らせ】
157頁の図表2中、金融先物取引として矢印で示された箇所の白地部分は、指定紛争解決機関としての網掛けが付くべき部分の誤りです。
- 〔要 旨〕
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            特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)は,2009年8月に設立され,翌年(2010年)2月に紛争解決等業務を開始し,本年(2025年)で15年を経た。本稿は,これまでの業務を振り返り,その内容を説明することで,FINMAC の活動について読者の理解を得ようとするものである。 
 FINMAC は特定非営利活動促進法に基づく特定非営利活動法人であり,金融商品取引法に金融ADR 制度が導入されたことを契機に,証券・金融商品取引に係る金融ADR 制度を担う組織として,また,金融商品取引業関係団体における紛争解決等業務の一元化を図るための組織として設立されたものである。このほか金融商品取引法の認定投資者保護団体,裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律に基づく認証ADR 機関としての性格を有する。
 事業規模は約4億2,000万円(2025年度予算)であり,その費用のほとんどを金融商品取引業者等の業界が負担している。業務は,金融商品取引法の自主規制機関の構成員等を相手方とする,顧客からの相談,苦情処理,紛争解決手続(あっせん手続)を行うことであり,2024年度までの15年間で受け付けた件数は,相談89,386件,苦情17,041件,あっせん申立て3,806件に達する。
 あっせん手続はあっせん委員(弁護士)1名によって主宰される。あっせん手続の申立てには低廉な額の申立金が必要である。あっせん委員は,あらかじめ,あっせん手続の申立人から申立書を,被申立人から答弁書を得て,参考資料を徴求しつつ,期日を定め当事者の出席を求めて事情聴取を行う(あっせん期日の開催)。あっせん期日は多くは1回で終わり,手続は概ね4ヶ月で終了する。約7割で和解が成立し,請求額に対し支払われる額の割合は事案によって異なるものの平均で約2割である。当事者に対しアンケート調査を実施しており概ね良い評価を得ている。
 FINMAC は,証券・金融商品取引に係る紛争の解決だけでなく,紛争解決等業務の状況を事業者へフィードバックすることにより,その自浄作用に資することで資本市場の健全な発展に寄与するものである。




