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証券経済研究 第95号(2016年9月)

マイナス金利と国債市場—日独国債とレポ取引—

代田純(駒澤大学教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 日本においては,2016年1月にマイナス金利が導入されたが,現状では適用範囲は限定されている。他方,日本の新規財源国債の発行量は40兆円前後で推移しているが,借換国債発行は100兆円を超えている。しかし,日銀が毎月10兆円のペースで国債買い切りオペを継続しており,国債流通市場では売買代金が縮小している。国債流通市場では銀行のシェアが低下し,代わって海外投資家によるシェアが高まっている。国債金利のマイナス化は,基本的には日銀オペの影響であろうが,これに次ぐ要因としてレポ市場の拡大があろう。
 日本のレポ市場では,現先取引(売買形式)と現金担保付債券貸借取引(貸借形式)が並存してきた。後者の市場規模が拡大しており,信託銀行等の市場参加者は国債を保有する必要がある。こうしたレポ市場の発展は,金融機関に国債保有を促す要因として,国債金利のマイナス化を規定した一因であろう。
 ドイツにおいては,ECBにより2014年6月以来,マイナス金利が導入された。しかし,2015年以降,マイナス金利が適用される,超過準備預金等の残高は増加してきた。ドイツでは,憲法上に債務制限条項が2009年に導入されたこともあり,国債発行が抑制されている。これも一因となり,流通市場での売買代金は減少している。さらに,ECBが資産買入プログラムによってドイツ国債を買い切りしており,ドイツでも10年物ブンドの利回りはマイナス化した。ドイツでも国債金利のマイナス化は,ECBの影響が基本であろうが,やはりレポ取引の影響があろう。
 日独ともに,国債流通市場が縮小し,中央銀行による国債買い切りオペが影響している。その結果として,国債金利のマイナス化が生まれているが,レポ市場拡大という要因も影響していよう。

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