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証券経済研究 第94号(2016年6月)

公的年金基金によるコーポレートガバナンス—エンゲージメントを用いる合理性—

鈴木誠(文教大学准教授)

〔要 旨〕
 わが国公的年金であるGPIF(年金積立管理運用独立行政法人)は世界最大の運用資産規模を誇る。これまでその投資先への株主権の行使について様々の意見が交わされ,社会情勢の変化に対応して,その都度制度改正が行われてきた。近年のコーポレートガバナンスコードやスチュワードシップ・コードのわが国での導入や各国への普及により,多くの機関投資家や企業がこれらに準拠する状況ができつつある。
 しかしながら,わが国の公的年金では株主権の行使に慎重な立場を崩さない。その理由は「国家のよる投資先企業の支配」への懸念を払拭することができないからとされる。わが国とは逆に欧州では長期投資家への議決権の優遇策や株式保有の制限策などが制定されており,長期投資家と企業との関係が模索されている。スチュワードシップ・コードの策定以後,導入が進む,エンゲージメントについては企業年金基金連合会のように実績ある外部機関への委託という方法も考えられる。本稿ではエンゲージメントの有効性を検証するための手段としてゲーム理論を利用して,公的年金と投資先企業のエンゲージメントに関する試行を行った。このシミュレーション結果によれば,両者共に「協調的」な対応を取ることが最も望ましい結果を得ることができた。わが国公的年金による株主権の裁量的な行使にはなお,時間がかかるとみられるが,エンゲージメントの導入は先発国の例やシミュレーションの結果にも見られるように,投資家である公的年金と投資先企業の両者にとってWIN − WIN の関係を導くと期待される。

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