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証券経済研究 第93号(2016年3月)

ポートフォリオリバランスとその効果

米澤康博(早稲田大学大学院教授)

〔要 旨〕
 本論文の目的はわが国のポートフォリオリバランス効果を実証的に明らかにすることにある。この効果を分析する際の共通のframeworkが定まっていない中,一つのframework,考え方,定式化を提案する。
 ポートフォリオリバランスの語彙は,中央銀行の国債買いオペレーション政策によって国債利回りを大きく低下させ,民間金融機関等を中心にそれへの運用魅力度を下げ,相対的に期待収益率の高い株式,貸し出し等のリスク資産運用へポートフォリオをシフトさせる効果から来ている。ポートフォリオリバランス政策の目的はこのポートフォリオ調整を通じて国債以外のリスク資産の期待収益率を下げることにある。この政策は特にわが国の異次元量的緩和政策の一つとして行われている。
 実証分析の結果,日銀の大量国債買い入れ,その結果の保有額が国債利回り,リスクプレミアムを低下させていることは明らかであり,その効果は相当に強いことがわかった。それに比してそれが株式のリスクプレミアムに与える効果は予想に反してアベノミクス以前はプラスの効果を持っていたがアベノミクス以降は有意な効果は持っていない。株式ETFの購入保有額も株価に対しては有意な効果は持っていないことがわかる。これは予想外であるが,この間の株価の上昇はROEの上昇で十分に説明できるからである。株式購入保有額,国債購入保有額は高い伸び率で上昇しているが株価はそこまで上昇していないのが実態である。ただし,アベノミクス以降のROEの上昇は為替の円安効果に負う所が大である。この円安はもちろんアベノミクスの異次元緩和政策によるものであるので,この点を含めて再評価するのであればそれは株価を高めたと言っても誤りではないであろう。

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