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証券経済研究 第92号(2015年12月)

変貌するアメリカ国債流通市場
—市場構造の変化が「フラッシュ・クラッシュ」によって認識される—

福田徹(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 アメリカ国債流通市場の電子化が進展している。同市場はその機能や参加者の違いによって,投資銀行とその顧客である機関投資家間で実行されるものとインターディーラー・ブローカーを仲介者として行われる投資銀行間等のものに二分される。後者については,インターディーラー・ブローカーなどが開発した電子取引プラットフォームを利用した取引が拡大しており,国債全体の50〜60%,オン・ザ・ラン銘柄に限ると90%程度のシェアになるとされている。一方,その取引への参加者であるが,投資銀行のみならず株式市場における高頻度取引業者のようなプリンシパル・トレーディング・ファームが大きいシェアを占めるようになって来た。つまり,インターディーラー・ブローカーを仲介者とした市場では,取引の電子化とそれに対応した新たな参加者の参入が観察されるのである。
 一方,2014年10月15日,アメリカ国債流通市場はこれといった材料が無いにもかかわらず記録的な大変動を経験した。なお,その日の変動幅は37ベーシス・ポイントであったが,1998年以降でそれを上回るのは3回のみであり,いずれも大幅な変動を引き起こす明確な材料があるとされている。この事態を重く見たアメリカ財務省など政策当局は共同でそれに関する報告書を作成し,2015年7月13日に公表している。その結論であるが,同市場の流動性および効率的な取引の執行がこれまで通り健全な状態にあるというものであった。ただし,取引の電子化や新たな市場参加者の参入に代表される市場構造の変化がリスクを高めているのではないかという疑問も提示している。さらには,流動性の性質の変化によって,市場の状態をより深く把握するために必要となる流動性の計測に用いる新たな手法が必要とされていると述べている。

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