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証券経済研究 第91号(2015年9月)

株主優待が権利付き最終日までの株価に与える影響

望戸美希(広島信用金庫)
野瀬義明(桃山学院大学准教授)

〔要 旨〕
 本研究では株主優待を実施する企業を対象に,優待の権利付き最終日までの株式パフォーマンスを分析した。2011年4月から2014年3月末までに株主優待の権利が確定した延べ4,107件について,権利付き最終日まで約100営業日間の株式パフォーマンスを検証したところ,権利付き最終日の約3ヶ月前から正の日次超過リターン(AR)の観測頻度が高まった。計測期間内の投資開始日と投資終了日をすべて組み合わせて累積超過リターン(CAR)を算出したところ,投資終了日を権利付き最終日の前日とした組み合わせで総じて5%を超えるCARが得られた。最も高いCARが得られたのは投資開始が権利付き最終日の60営業日前,投資終了が権利付き前日となる組み合わせであった。BHAR(buy and hold 超過リターン)も同期間が最も高い水準となった。CAR,BHAR,TOPIXで調整しない単純な株価変動率(BHRR)ともに,リターンは有意に正であった。
 CAR,BHARを貸借銘柄と非貸借銘柄で区分し比較したところ,非貸借銘柄で有意に高い傾向が示された。一方,株主優待実施の前後で個人株主数は有意に増加するものの株主資本コストの代理変数であるβ値に有意な減少は認められず,株主優待が資本コストの低減に寄与するという仮説は支持されなかった。株主優待利回りと超過リターンにも有意な相関は見られなかった。以上の結果は,空売り制約によるオーバープライシングが超過リターンの源泉である可能性を示唆する。株主優待は売買の制約を一因として株価を(上方に)歪める効果を持つと考えられる。

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