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証券経済研究 第90号(2015年6月)

EUの銀行同盟における「責任原理」の導入
—ドイツの金融システムとの関係性を中心に—

黒川洋行(関東学院大学教授)

〔要 旨〕
 先の金融危機は,1999年のユーロ導入後,EU にとってはじめての試練であり,経済通貨同盟(EMU)の運営の難しさが改めて認識されるところとなった。また,ユーロ圏がこうした危機に対処できる有効な制度的枠組みを持っていないという制度上の不備も露呈した。この金融危機がもたらした波紋は,ドイツの金融システムにとっても,いまだに最大のリスク要因であるといえる。また,アセットの圧縮,自己資本増強,海外エクスポージャーの縮小,デリバティブ取引縮小,リテール回帰といった銀行戦略の変化をもたらした。
 金融危機における最大の構造的問題は,国家債務危機が銀行危機を生み,逆に銀行危機が国家債務危機につながるという「国家と銀行のリスク結合」であったといえる。
 欧州の銀行同盟(バンキング・ユニオン)は,加盟各国が個別に行ってきた銀行監督と銀行の破綻処理をEU レベルにまで引き上げて統一的に行おうとするものであり,その目的は,国家と銀行のリスクの分離にある。
 単一破綻処理機構には,あらたに,破綻した際に銀行の株主と債権者に負担を求める「ベイルイン」手続きを取り入れているが,これは,ドイツ側が強く主張して取り入れられた銀行側の自己責任原則に基づくものである。この点において,ドイツのリベラルな経済政策の考え方が,EU の銀行同盟の基本的な概念構成に対して強く反映されているといえる。
 本稿における分析を通じて,銀行同盟は,国家と銀行のリスクの分離という点で,ユーロ圏の金融システムの安定化にとって一定の制度的担保を与えるものであると評価することが可能である。

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