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証券経済研究 第89号(2015年3月)

戦時期の起債市場と社債保有構造

深見泰孝(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 本稿では戦時経済統制下の社債市場について,特に,どのような銀行が社債を保有したのか。また,その背景事情にはどういったことがあったのか。そして,引受免許をもった証券業者は,引受や下引受した社債をどのような相手に販売していたのかという点を中心に検討した。
 戦時期の金融統制は,不要不急産業への資金供給の抑制を目的に,臨時資金調整法と国家総動員法を基礎にして行われた。その結果,軍需産業や国策会社は銀行融資や社債発行を通じて,優先的に資金調達を行うことができた。他方,発行された社債の最大の投資主体は普通銀行であり,特に資金調整によって貸出が制約され,運用難に陥った地方銀行が社債保有を拡大させた。それは,金利平準化によって社債投資の採算が合うようになったことを基底に拡大し,政府や日本興業銀行による預金部保有社債の売却や,興銀債の優先割当などで,地方銀行は社債保有を増やしていった。しかし,こうした預金部保有社債の売却などは,地方銀行の運用難の救済だけを目的に行われたのではなく,地方銀行のもつ余資を国債消化資金に転化することこそが,その真の目的であった。なぜなら,定期預金金利が国債の表面利率を上回っている地域が全国に半数ほどあり,地方銀行に対して低利国債の保有は強要できなかった。そこで,政府は社債の売却を国債消化促進策の甘味材として利用せねばならなかった。その結果,各銀行は社債保有を増やす一方で,婉曲的に低利国債の保有も増額させられていたのであった。
 また,第三の論点である証券業者が引き受けた社債の販売先に関わっては,事例に挙げた川島屋証券と山一証券では,金融機関を中心に社債を販売していた。1940年下期だけではあるが,販売先の詳細も明らかとなった山一証券では,社債消化が困難になっていたことを背景に,地方銀行,貯蓄銀行,信用組合と少額ずつ取引していた。その一方で,募残,自己玉への付け替えも相当な量に上っていたことが明らかとなった。

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