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証券経済研究 第88号(2014年12月)

いわゆるボルカー・ルールに関する一考察

若園智明(当研究所主任研究員)

〔要 旨〕
 本稿では,2010年7月に成立したドッド・フランク法のSec.619(いわゆるボルカー・ルール)について,その成立過程と要点を概観し,公的な調査や学術先行研究を引用して問題点の整理を行なう。その結果,ボルカー・ルールに関する複数の疑問を提示する。
 当該ルールの本質を外部不経済への対処と捉えるならば,立法を通じて大手金融会社の業行為を是正する試みは正統であろう。その規制的な選択肢としては,①資本や流動性の追加的要求による内部化と,②該当する行為自体を禁止ないし制約する,が考えられる。さらに英国で提唱された,いわゆるBank Ring-Fencingを米国に適用するのであれば,③Glass-Steagall Act(Banking Act of 1933)の再検討も選択肢に含まれよう。しかしながら,連邦議会におけるSec.619の審議は,2010年1月のObama大統領による要請を踏まえて行なわれている。つまりは,ボルカー・ルールに代替する規制は公式に検討されてはいない。当該ルールが外部不経済への対処として最適な選択であったのかとの疑問が生じる。
 この他,ボルカー・ルールの基礎となったMerkley-Levin Amendmentに関して,規制対象とされた業務とシステミック・リスクとの関係が証明されているとは言えない。さらにルールの適用において,業務における禁止と許容の区分けは容易ではなく,監督機関の直接的な監視手法も不明である。また,相当の業務がshadow banking部門により代替されることが予想され,その結果,当該ルールは形骸化し,社会的なコストを課すだけとなる恐れがある。

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