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証券経済研究 第86号(2014年6月)
米国地方政府の破綻と事後的な財政再建のあり方
—ペンシルバニア州ハリスバーグ市を事例として—
三宅裕樹(京都大学大学院非常勤講師)
〔要 旨〕
ペンシルバニア州の州都であるハリスバーグ市は2010年,多額の偶発債務が顕在化したことを機に財政破綻に至った。当初,州政府からの支援を受けて財政再建を図ったものの,これが行き詰まり,債権者にも債務の減免を含めた経済的負担を求めざるをえない事態となった。これに対してハリスバーグ市は,私的整理を通じた手続きにより,債権者から任意での条件変更に応じてもらう合意を取り付けることに成功した。こうした市の選択の背景には,地方政府を対象とする倒産法制(再生型)である連邦倒産法第9章を利用した場合のコスト,特に他の州・地方政府も含め将来的に地方債の発行が困難化するリスクと,同制度の下での手続きにおける結果の不確実性への懸念があった。また,債権者の側も,連邦倒産法第9章の存在が一種の脅しとなり,債務の減免に任意で応じざるをえないという計算が働いたと考えられる。米国では本事例にみられるように,財政破綻に至った地方政府は,州政府からの支援と債権者への債務調整の要請を,個別具体的な状況に応じて適切に組み合わせて,財政運営の立て直しに向けた取り組みを進めることが可能となっている。連邦倒産法第9章の存在は,こうした地方政府が採りうる選択肢を広げる効果を有する。
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