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証券経済研究 第86号(2014年6月)

東日本大震災における被災企業のバランスシート改善と金融機関・ファンドの役割(上)
—私的整理による事業再生を念頭に—


松尾順介(桃山学院大学教授・当研究所客員研究員)
田頭章一(上智大学法科大学院教授)
中野瑞彦(桃山学院大学教授)

〔要 旨〕
 東日本大震災は,企業の事業活動に甚大な被害をもたらしたが,その後被災企業の復旧・復興策が多角的に立案され,実行されてきた。本論文は,私的整理スキームを活用した被災企業の復興・復興過程におけるバランスシート改善の方策を整理することにより,債務者企業,金融機関および各種再生ファンドなどいくつかの立場からの関与のあり方について検討を加えようとするものである。
 本号(上)では,以下の検討を行い,それぞれ下記の結論を示している。
 Ⅰでは,被災企業再生支援のための各種機関について概観した後,被災企業再生のための私的整理の特殊性はどこにあるか,そしてバランスシート改善のための手法としてDDS(デット・デット・スワップ)の意義と限界という観点から検討を行っている。大規模災害における被災企業の再生に関しては,多様な公的支援策・支援機関を活用した効果的な再生手続の構築が期待される。ただし,被災企業の再生プロセスの特殊性を無視して,それを一般の企業再生に適用することは,適当とはいえない。最近,さまざまな場面で利用促進が図られているDDSについても,政策的な公的支援や原発賠償の見込みなどを前提とした被災企業のバランスシート改善手法として使うことは有意義といえるが,たとえば中小企業金融円滑化法による対応終了後の中小企業の再生でDDSを活用する際には,実体的な事業再生の裏付けがあるか,慎重な検討が不可欠である。
 Ⅱでは,被災地域の民間金融機関が直接的な被害に加え貸出債権の劣化などにより深刻な被害を蒙っていることを指摘している。公的資金への依存には限界があることから,金融機関が真の健全性を回復するためにも地域の経済状況の復興が何よりも重要である。また,二重債務問題の解決に向けての金融機関の取り組みはDDSと債権放棄を主なスキームとして一定の成果をあげているが,将来的には金融債権にのみ負担がかからないような新たな枠組みを考える必要がある。

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