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証券経済研究 第83号(2013年9月)

破綻処理スキームの国際的枠組みの構築

佐賀卓雄(当研究所理事・主任研究員)

〔要 旨〕
 2007年からの金融システム危機の過程で,多数の大手金融機関が経営破綻に追い込まれた。この間,アジア通貨危機を契機に創設されたFSF (Financial Stability Forum)(国際金融フォーラム)は効果的な対策を講じることができなかったため,初めて開催されたG20において,参加国および参加機関の拡大と,任務の拡大が図られ,FSB (Financial Stability Board)(金融安定化理事会)が創設された。FSBはG20,IMF,IOSCO,各SSBとの関連を明確化するとともに,それらの結節点としての役割を与えられた。かくして,FSBは国際金融アーキテクチャーの要の位置を占めることになったと評価される。
 2008年11月にワシントンにおいて開催された最初のG20において,国際金融機関の改革(具体的には,IMF (International Monetary Fund)の改革,FSFの参加国の拡充と権限の拡大),OTCデリバティブ改革,格付会社の監視の強化などと並んで,グローバルに活動するクロスボーダー金融機関の秩序ある破綻処理を実現するために,破綻処理スキームを見直すことがアクション・プランの一つとして掲げられ,FSB, IMF, BCBS (Basel Committee on Banking Supervision)(バーゼル銀行監督委員会)において検討が続けられている。
 今回のグローバルな金融機関の破綻から明らかになったことは,金融機関の業務がグローバルに展開しているにもかかわらず,その破綻処理スキームは比較的整備されている場合でも一国内での処理に限られ,クロスボーダーの破綻処理スキームは大きく立ち遅れていることである。
 FSBは2011年10月に「金融機関の効果的な破綻処理制度のための主要な特性」(KA)を提示し,各国はそれを指針に制度の見直しと整備を進めている。その後の進捗状況の調査から明らかになったことは,各国において破綻処理スキームの見直しと整備が進んでいるものの,クロスボーダーの破綻処理は各国間での制度のすり合わせと協力が必要であるため,余り進展していないということである。国家間の法制の調整が必要なクロスボーダーの破綻処理制度については困難な課題が山積しているのが現状である。
 FSBは抽象的なKAの提示から,より具体的な指針を提示する段階に至っている。特に,破綻処理戦略については,シングル・ポイント・オブ・エントリーとマルチプル・ポイント・オブ・エントリーの二つの戦略モデルを提示し,議論の焦点を絞り込もうとしている。
 また,アメリカ,イギリス,EUにおける破綻処理戦略の方向性についても収斂する傾向がみられる。これらの主要先進国が金融機関の海外業務のほとんどを占めている現状を考えれば,FSBの提示した破綻処理戦略を軸に今後の取組みが進むものと考えられる。

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