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証券経済研究 第82号(2013年6月)

米国で拡大するボラティリティ投資—ETNを利用した投資状況とその投資リスク

志馬祥紀(帝塚山大学准教授・当研究所客員研究員)

〔要 旨〕
 米国では2008年のリーマン・ショック以降,株式市場のボラティリティを示す指標(VIX,「恐怖指数」として有名)を取引対象とする証券化商品市場(及びデリバティブ取引市場)が拡大している。本稿ではこれら株式ボラティリティ商品の取引仕様,市場状況について述べた後,その投資リスクを説明する。その後,近年発生した同種商品に関する問題事例を紹介し,証券化商品上場がデリバティブ市場に与えた影響について実証分析を行った。その結果,以下のファインディグズが得られた。
 まず,VIXに示される株式市場のボラティリティを対象とする商品市場(ETN・ETF・先物取引)が米国で急拡大中である。これはVIX(指数)を直接取引する市場がないことから,投資家はデリバティブを利用したETN・ETFへの投資を行っている実体がある。
 しかしながら,ボラティリティETNへの中長期投資は(過去のデータによる限り)損失が発生する可能性が高い。これはボラティリティETNがその資産を運用するVIX先物市場の期間構造に起因している。投資家がこうした損失を回避しようとするならば,同種ETNの保有期間を短期間に限定するべきだと考えられる。
 最後に,株式ボラティリティを対象とするETNの出現が,その資産運用市場であるVIX先物市場の取引流動性へ与えた影響について実証分析を行った。その結果株式ボラティリティETNの出現は,先物市場について取引流動性の拡大という正の効果を有するものの,レバレッジの付与されたボラティリティETNについてはその効果は必ずしも正ではないこと指摘した。
 株式ボラティリティを対象とするETNは,株式保有に伴うリスクを減少させ投資家の利便性を向上させ得る,新たな投資ツールである。投資家による中長期の保有は向かない等の欠点はあるが,タイミングをとらえれば株式ポートフォリオのヘッジやボラティリティに対する投機上,有効な商品であろう。
 しかしながら,その商品性は複雑であり,投資家の商品性の理解が必須であり,またボラティリティ指標の性格,すなわち大規模・突然の変動による損失可能性について留意する必要があろう。

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