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証券経済研究 第82号(2013年6月)

英国の新金融監督体制とマクロプルーデンス政策手段

小林襄治(当研究所評議員・客員研究員)

〔要 旨〕
 英国では,2012年末に金融サービス法が制定され,2013年4月から正式に新たな金融監督体制がスタートした。2000年金融サービス市場法に基づき,金融機関・市場等の一元的監督をはかり,「世界をリードする規制機関」を称していたFSA(金融サービス機構)は「解体」され,マクロプルーデンス規制(金融システムの安定)を担うFPC(金融監督委員会)とミクロプルーデンスを担うPRA(健全性機構),および独立の機関で金融業務行為等の規制を担うFCA(金融行為機構)が発足した。金融危機の反省から,マクロプルーデンスの役割が強調されての改革である。
 FPC とPRA はイングランド銀行内に設置されるが,法律の規定では両者に対する財務省の役割も明示され,イングランド銀行の権限が強化されるというより,財務省ないし政府のイングランド銀行やこれら規制機関に対する監督権限が強まっている。金融システム安定の責任は中央銀行だけでなく政府の責任でもあるからであろう。
 金融システム安定のための政策手段に関しては,当面はバーゼルⅢにおけるカウンターシクリカル資本バッファ(CCB)を活用した自己資本の上乗せと,特定部門に対する自己資本の上乗せの権限をFPC が有することになる。これらが,どのような効果を発揮するかはこれからの課題である。そのための判断指標が示されているが,ここには名目金利や貨幣量,為替相場,国債にかかわる指標が一切なく,貨幣政策(マネタリー・ポリシー)との関連は不明である。金融監督政策(フィナンシャル・ポリシー)も貨幣政策との協調なしには効果を発揮できないであろう。
 レバレッジ,担保取引やトレーディング資産のリスクウェイト等など国際的議論が決着していない問題は多い。また,制度改革(イギリスではリテール・リングフェンスによる,小売商業銀行と投資銀行の「分離」)も予定されている。新体制がいかに機能するか,注意深く見守る必要があろう。

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